本年度、hCBDを介した任意蛋白質Xをセルロースにハイブリッドさせるための融合蛋白質を新たにX-C Linkと命名した。例えば、抗GFP VHH抗体とhCBDの融合蛋白質を今後、抗GFP VHH-C Linkと呼ぶ。 研究最終年度に当たる本年度は、抗体利用に特化した研究を進めた。昨年度の抗GFP VHH抗体の他に、抗RNaseA VHH抗体を用いた、抗RNaseA VHH-C Linkを新たに作製し、抗RNaseA VHH/紙ハイブリッドを作製した。これを用いてモデル抗原蛋白質RNaseA-EGFPに対して抗原捕捉性能を検討した。予想通り、抗GFP VHH/紙ハイブリッドと同様に安定した抗原捕捉性能を発揮することを確認した。これにより、VHH-C Link技術は、他の任意のVHH抗体への適用可能性が示唆された。 また、昨年度作製した抗GFP VHH/紙ハイブリッドに関し、室温下での乾燥保管を56週間経た後でのEGFPの捕捉性能を確認し、当該手法が1年間を越えるVHH抗体の長期保管形態としてもVHH抗体の利用技術としても実用に耐えることを明らかにした。 プロテアーゼ活性センサー技術に関しては、捕捉側を抗GFP VHH-C Linkとしたラテラルフローデバイスとし、サンプルパッド上にHRV-3Cプロテアーゼの切断配列を有するBAF-C Linkを付着させ、サンプルパッド上でのプロテアーゼ反応を試みた。その結果、プロテアーゼ反応とラテラルフローを併行させることは、高感度検出の観点から非効率的であることが判明した。試験管内でのプロテアーゼ切断反応と、その後のラテラルフロー検出の2段階構成が適当であると結論した。SARS3CLプロテアーゼのプロテアーゼ処理による成熟化に関しては、意図しない部分分解の問題は解決できず、今後の課題として残された。本年度は、4件の学会発表を行った。
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