酸性化でのみ強い蛍光を発するpHrodo Greenを用いて餌生物の標識に最適な条件を検討した。色素濃度及び染色時間を様々に変え海洋細菌培養株を染色したのちフィルター上に濾過し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、フィルター上の細菌はそのままでは蛍光はほとんど観察されないが、pHが2より小さい緩衝液で洗浄することにより、目視可能な蛍光が生じることが明らかになった。これにより、食胞内に取り込まれた細菌のみを観察することが可能になり、フィルター上での餌の重なりにより生じる過大評価の影響を除去することができると期待される。今後はこの手法を天然群集に適用することを想定している。 白鳳丸KH-17-4次航海を利用して、北太平洋亜熱帯域の東西測線上で混合栄養生物の密度および摂餌速度の測定を行った。このときはpHrodo Greenによる手法はまだ検討中であったため、旧来の色素による染色を行った標識餌を添加して培養する手法(FLB法)に加え、粒子食を行う細胞のみに出現する食胞を染めるプローブであるLysoTracker Green染色とフローサイトメトリーを組み合わせ(LT法)、混合栄養生物の定量を行った。FLB法のサンプル(プレパラート)は現在観察中である。LT法のサンプルは船上で直ちに測定し、データを順次解析している。LT法はサンプルの濾過や煩雑な観察を必要としないため、比較的高解像度のサンプルを得ることができる利点がある。本航海においては各測点5深度からサンプルを得、鉛直分布を明らかにした。ナノサイズ以下の植物プランクトンに占める混合栄養生物の割合は中部および西武北太平洋においては深度とともに減少し、有光層以下ではほぼ0になった。一方、東部北太平洋においては10%光量層付近で割合が最大となった。植物プランクトンにおける粒子食は栄養塩濃度や光量の低下がトリガーとなることが指摘されており、そのどちらがより強いかは東西で異なっている可能性がある。
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