研究課題
ラフィド藻類のシャットネラ属(以下、シャットネラとする)は国内外の各地で赤潮を起こし魚類の大量斃死を引き起こす有害鞭毛藻である。シャットネラはその生活史の一時期に海底上で生残するステージであるシストを形成するので,栄養細胞個体群形成機構を解明するためにはシストの発芽動態について研究することが必須である。本研究課題は,シャットネラの大規模な赤潮が発生する三重県英虞湾を研究対象海域として,以前、研究代表者が開発した器具(Plankton Emergence Trap/chamber: PETチャンバー)によりシストの現場海底からの発芽を世界に先駆けて実測し,また栄養細胞群集の季節消長を追跡することで,その個体群形成機構を解明することを目的としている。2016年度は、三重県英虞湾内に設けた一定点において、シャットネラシストの現場海底上における発芽量の実測調査を9月と10月、11月、および2017年3月に行った。PETチャンバーは、毎回、3~5本を海底に設置した。これによって得られたサンプルを直ちに実験室に持ち帰り検鏡に供した。その結果、いずれの調査月においても発芽細胞はみられなかった。一方、2016年6月より2017年3月まで毎月(ただし2017年2月は除く)現場で採水を行い、水柱中のシャットネラ栄養細胞の出現を調べたところ、7月と8月、12月に確認された。ただし、この年には栄養細胞は大きな個体群を形成することはなかった。海底からいつシストが発芽し、発芽した細胞が栄養細胞個体群形成に対して、どのタイミングでどの程度寄与しているかについて詳細に明らかにするために、今後さらに調査を継続していく。
2: おおむね順調に進展している
現場ではおおむね天候に恵まれ、ほぼ予定通りに調査を実施することができた。また、サンプルの処理も順調に進んでいる。これまでのところ、本研究課題の遂行において大きな支障は発生していない。
これまで行ってきた英虞湾での現場調査(発芽実測、採水、採泥、海洋観測)を今後も継続して行なう。また、培養実験により、シストの発芽生理も調べる。これらにより、シャットネラシストの発芽と栄養細胞の出現関係を詳細に明らかにしていく予定である。
すべて 2017 2016
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