研究課題
福井県にある三方五個の一つである海水湖の日向湖の底泥から、集積培養と段階希釈法により新奇な偏性嫌気性の原生生物を単離した。この鞭毛虫は1本の独立した前鞭毛と絡み合った3本の後鞭毛を有する特徴的な形態を有していることが光学顕微鏡と電子顕微鏡観察で確認できた。この鞭毛虫からDNAを抽出し、それを鋳型としてPCRによって18S rRNA遺伝子(18S rDNA)を増幅して塩基配列を決定した。また、RNAを抽出してワンステップ逆転写PCRによっても18S rRNAの塩基配列を決定した。単離株に特異的な一組のPCRプライマーを設計・作成した。他の湖から単離した嫌気性鞭毛虫を用いて、その特異性をPCRによって実験的に確認するとともに、リアルタイムPCR法を用いた鞭毛虫の計数方法を確立した。2019年1月から12月まで、毎月一回、日向湖の底泥表層(0-3 cm)を採取した。底泥試料からDNAを抽出して、リアルタイムPCR法で単離株の計数を試みたが、全く検出されなかった。そこで、パーコールを用いた密度勾配遠心法で微生物を回収して、プリムリン染色法で鞭毛虫を、細菌をDAPI染色法で計数した。また、水蒸気蒸留したのちにメチレンブルー法で全硫化物量と強熱減量を測定した。その結果、新奇鞭毛虫数は4月から徐々に増加し、7月にピークに達した。その後、冬季に向かうにつれた徐々に減少した。全鞭毛虫数は新奇鞭毛虫と同じような変動を示し、両者には有意な相関関係が認められた。一方、鞭毛虫数は何れの要因とも有意な相関関係は認められなかった。嫌気層では原生生物を補食する生物がいないためボトムアップのみが働いていると考えられる。しかし、餌生物である細菌数と鞭毛虫数に関係性が見られないため、嫌気的な底泥では、鞭毛虫数の変動のボトムアップ効果はないと考えられた。
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Estuarine, Coastal and Shelf Science
巻: 224 ページ: 34~42
https://doi.org/10.1016/j.ecss.2019.04.046
Data in Brief
巻: 25 ページ: 104213~104213
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