研究課題
放射性Csが食物網を介して魚類に摂取される機構を解明するため,福島県桧原湖に流入する河川の河床堆積物,落ち葉,表面土,および湖内堆積物の放射性Cs濃度を分析すると共に,湖内で高い放射性Cs濃度が検出されているウグイとコクチバスについて,超音波テレメトリー実験による生息地利用特性の推定と炭素・窒素安定同位体比分析による食物源の推定を行った.流入河川の137Cs濃度は,流域の落ち葉や河床堆積物では減少傾向にあったが,表面土では増加傾向にあった.また,湖内堆積物の137Cs濃度は水深が深いほど有意に増加する傾向にあった.湖内堆積物の137Cs濃度は,2016年にピークに達した後,若干減少する傾向にあった.超音波テレメトリー実験の結果,ウグイは結氷期と産卵遡上期を除くと一年を通じて水深5~25mの幅広い水深帯を遊泳する傾向にあった.これに対し,コクチバスは一年を通じて水深10m以浅の浅場に留まる傾向にあった.ウグイとコクチバスでは,放射性Csを摂取した水深帯が大きく異なっていた可能性が考えられる.食物源の推定のため,ウグイ,コクチバス,動物プランクトン,および底生無脊椎動物の安定同位体比を分析した.ウグイの分析値から同位体比の濃縮率を減ずることにより過去の餌生物の値を推定した結果,その値は動物プランクトンの分析値と乖離する傾向にあり,水生昆虫など底生無脊椎動物の分析値と重なる傾向にあった.ウグイは,こうした底生動物の摂餌を介して湖底や流入河川の高濃度の放射性Csを取り込んだ可能性が示唆された.一方,コクチバスの分析値から過去の餌生物の値を推定した結果,その値はコクチバスの胃内から検出された小魚,スジエビ,および水生昆虫の分析値の中間的な値を示した.コクチバスは,湖岸に近い浅場でこうした餌生物を複合的に摂餌することにより放射性Csを取り込んだ可能性が考えられる.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)
Fisheries Science
巻: 85 ページ: 561-569
10.1007/s12562-018-1280-8
Water Resources
巻: 45 ページ: 589-597
10.1134/S0097807818040139