有害藻類カレニア・ミキモトイ(Karenia mikimotoi)による赤潮は,規模や分布域を拡大し,日本の水産業に深刻な被害を与えている。申請者は,最近,カレニアを特異的に殺滅するウイルス(KmV)3株を,赤潮衰退期の海水から分離・培養することに成功した。これは,カレニア赤潮の衰退にウイルスが関わっている可能性を示す重要な発見であった。ウイルスは,標的生物のみを殺滅し,爆発的に増えるので,大増殖する赤潮生物を連鎖的に死滅させることが可能であり, 赤潮防除技術への利用が大いに期待できる。本課題では, KmVの性質,殺藻力や殺藻範囲,現場におけるカレニア個体群への影響などを詳細に把握するために, KmVの性状解析,定量PCRや抗体法などKmVの高精度モニタリング技術の開発,カレニア細胞内でのKmVの挙動や相互作用を明らかにすることを目的としている。具体的には,今年度は,1)KmVの形態学的特徴および遺伝情報の解明,2)定量PCRなど分子技術に基づいた高精度モニタリング手法の開発を実施した。透過型電子顕微鏡で宿主であるカレニア・ミキモトイ内に存在するウイルス粒子を観察し,形態学的特長を明らかした。また、陰染色によりウイルス自身の形態的特徴を明らかにした。高感度定量PCRについては、遺伝情報を得るために全ゲノム解析を行ったが、DNA抽出に検討を要し、部分配列を得るに至った。現在も、DNA抽出法を検討しているところである。さらに,ウイルス感染時にカレニア生体内で起こるであろう核の形態変化をモニタリングする技術を開発するため,画像解析技術の確立に向けて実験を開始した。
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