スケトウダラ太平洋系群の資源量変動機構を解明するために,噴火湾とその沖合域において,浮遊卵と小型浮遊仔魚をプランクトンネット鉛直曳で,大型浮遊仔稚魚と着底稚魚を幼魚用トロール網の傾斜曳と着底曳で採集した。また,バンドン採水器で仔魚の餌生物を採集し,CTD観測による水温塩分等の測定を行った。 親魚の平均年齢がやや高かった2017年級群(5.5歳)は,2018年級群(5.2歳)に較べて2-3月にのみ卵径が最大10%大きかった(2016年は5.3歳)。主群であった1月ふ化個体のうち,2月下旬から3月上旬まで生残した仔魚の礫石耳石孵化チェック径は,年級群間に差はなかった。この3年間は親魚はいずれも若齢の4歳魚の割合が最も高く,年齢組成の差が小さかったため,雌親魚の年齢に由来する卵サイズの年変動を原因とする生残過程はみられなかったものと考えられた。 2017年6月に着底曳で採集された尾叉長65mm以上稚魚の77%,2018年6月の75%の礫石耳石縁辺部には淡色帯が認められた。しかし傾斜曳採集稚魚には全く認められなかったことから,淡色帯は着底輪と推定した。輪紋径と体長のアロメトリー式から逆算した平均着底尾叉長は69.0±4.23mm(±標準偏差)だった。 相対体重(尾叉長と胃内容物除去重量のアロメトリー式からの偏差の割合)は,着底個体の方が遊泳個体よりも低く,地点間のばらつきも大きかった。着底後の主要餌生物であるツノナシオキアミの海底直上の地点間の密度差は大きかったことから,餌探索時間の増加が栄養状態の低下をもたらしたものと推定した。また相対体重は8月以降,2018年級群に較べて2017年級群の方が高く,体重に対する胃内容物の割合も高く,平均脊索長も大型に成長していた。従って越冬期の餌利用度が栄養状態と成長に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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