研究課題
1.本年度に行った研究の内容. 本年度は主として次の4項目についての研究を行った.(1)アジ亜科の各属および種の系統解析-アジ亜科に含まれるほぼすべての種を材料として,ミトコンドリアDNAを用いた系統解析を行った.その結果,本亜科はヨロイアジ群,ギンガメアジ群,ムロアジ群の3群に大別された.(2)Selene属とCarangoides otrynterの系統類縁関係-ミトコンドリアDNAを用いた解析から,Selene属は単系統群で,Carangoides otrynterと姉妹関係にあること,両者はイトヒキアジ属と姉妹関係にあることを明らかにした.(3)ギンガメアジ属の分解-分子系統解析と16項目の形態的特徴から,従来のギンガメアジ属を5属に分解することが妥当であるとの結論を得た.(4)ヒラアジ類稚幼魚の形態観察-ヨロイアジ属,ギンガメアジ属,マブタシマアジ属の稚幼魚の形態観察を行った結果,これらは主として稜鱗の形態および背鰭,臀鰭の軟条数から同定が可能であることを明らかにした.また,比較的多くの種が得られたギンガメアジ属については外部形態からの検索表も作成した.2.本年度に行った研究の意義と重要性 本年度の重要な研究成果は,まず大きくアジ亜科は3群に分かれ,それらの各属の構成と系統関係を明らかになったこと,従来のギンガメアジ属は5属に分けられ,それらは分子生物学的にも形態学的にも特有の形質をもつことを明らかにしたこと,Selene属の単系統性およびCarangoides otrynterとの類縁性を明らかにし,形態的特徴を明らかにしたことである.これらは今回の研究で初めて明らかになった事項で,本研究結果は極めて大きな意義があるものと考えられる.さらに,稚幼魚の検索表はこれらの分類を容易にすることから,現場での種同定の作業に対して重要な資料になるものと考えられる.
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Vietnam J. Mar. Sci. Tech.
巻: 19 ページ: 269-276