研究実績の概要 |
ウイルス性出血性敗血症(VHS)に対するホルマリン不活化ワクチンを水温20℃で接種したヒラメには感染防御能が誘導される。本研究では3 つの実験を設定し,本ワクチンを投与したヒラメの各器官における免疫関連遺伝子の発現をリアルタイムPCRを用いて解析することにより,本ワクチンの作用機序にインタ-フェロン(IFN)が関与していることを確認した。 すなわち,実験1では,水温20℃でVHS ウイルスをヒラメに接種した。実験2では水温20℃でホルマリン不活化ワクチンを接種した。実験3ではホルマリン不活化ワクチンを接種後,14日間水温20℃で飼育し,その後水温12℃で攻撃接種を行った。実験1および2では,接種1, 3, 7, 14 日後に3 尾の魚から心臓,脾臓および腎臓を採取し,RNA を抽出し,逆転写をした後リアルタイムPCRに用いた.リアルタイムPCR では, IL6, TNF, IFNγ, Mx, CD8αの遺伝子の発現の変化を調べた。実験3では攻撃1, 3, 7, 14 日後に同様にして臓器を採取して解析した。 その結果,実験1では炎症性サイトカインの発現が高かった。実験2では,炎症性サイトカインの発現は低かったが,MxやCD8αの発現は実験1と同様であった。実験3でも,炎症性サイトカインの発現は抑えられていたが,Mxは非常に強い発現を示した。また,各免疫関連遺伝子の発現は心臓で強い傾向があった。さらに,実験1,実験2では心臓のMxの挙動が脾臓や腎臓とは異なっていた。これらのことから,ワクチン接種後は炎症反応が抑えられること,および本ワクチン投与法によって誘導される免疫ではⅠ型IFNが重要であることが示唆された。また,心臓が魚類の免疫に重要な役割を持っている可能性が考えられた。
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