研究課題/領域番号 |
16K07841
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
一色 正 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (30378319)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水産学 |
研究実績の概要 |
本研究では,ヒラメParalichthys olivaceusのIFN関連遺伝子の発現に及ぼす水温の影響を推察するため,IFNの発現を誘導するポリイノシン酸・ポリシチジル酸(ポリ[I:C])を,異なる水温で飼育したヒラメに接種し,IFN関連遺伝子であるI型IFN,MxおよびISG15遺伝子の発現解析を行った。 実験では,ヒラメ当歳魚にポリ [I:C] を100 ug/100 uL/尾ずつ腹腔内接種し,水温20℃および10℃でそれぞれ飼育する20℃実験区および10℃実験区を設けた。各実験区には滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて同様に処理する対照区を設けた。IFN関連遺伝子の発現は,各区から接種0,3,6,12,24,48および96時間後に3尾ずつを無作為に取り上げ,脾臓および頭腎を採材して核酸抽出後,リアルタイムPCRによる相対定量を行って解析した。 その結果,20℃および10℃実験区のMx遺伝子の発現量は,それぞれ接種12および3時間後に対照区との間で有意差が認められ,そのピークは接種12および24時間後であった。10℃実験区におけるISG 15遺伝子の発現量は,20℃実験区に比べて緩やかに増加し,接種6,12および96時間後には有意差が確認された。I型IFNの発現量は20℃実験区と20℃対照区でのみ算出され,20℃実験区では接種6時間後にピークに達し,同区におけるISG15遺伝子と同様な挙動を示した。以上の結果から,水温はヒラメのIFN関連遺伝子の発現に影響を及ぼしていることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに行った実験により,当初に予想していたIFNの関与を指示する結果が得られただけでなく,心臓が魚類の免疫に重要な役割を持っている可能性を示唆する新規の知見も得られた。したがって,今後の研究は計画どおりに推進して問題ないものと思われることから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果に基づき,IFN産生の温度依存性およびVHSワクチンの効果に及ぼすIFNの関与について,リコンビナントIFN(rIFN)を用いて検討する。具体的にはヒラメIFNに関する遺伝子情報を基にしてプライマ-を設計し,VHSウイルスの実験感染ヒラメからIFN遺伝子を増幅後,大腸菌系によりタンパク発現誘導を行ってrIFNを作製する。このrIFNを異なる温度で飼育したヒラメに投与後,経時的に頭腎を採取して免疫関連遺伝子の発現を検出・定量するとともに,ヒラメをVHSウイルスで攻撃し,感染防御能の誘導効果を調べる。なお,rIFNの代わりにワクチンを投与したヒラメについても同様にして処理する。一方,IFN遺伝子を挿入した発現用ベクターを構築し,ヒラメにトランスフェクションすることで,rIFNタンパク質の発現を試みるとともに,各種水温条件で発現タンパク質の検出・定量,および生体防御能誘導効果の確認などを行う。これらの実験によって得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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