本研究では,ヒラメParalichthys olivaceusのIFN関連遺伝子の発現に及ぼす水温の影響を推察するため,生体内でヒラメのリコンビナントIFN(rIFN)の発現を誘導するプラスミド(rIFNベクター)を構築するとともに,異なる水温で飼育したヒラメにrIFNベクターを接種し,IFN関連遺伝子であるI型IFNおよびMx遺伝子の発現解析を行った。 rIFN遺伝子は,ウイルス性出血性敗血症ウイルスを接種したヒラメからRT-PCRを行ってIFN遺伝子のcDNAを合成し,そのシーケンス解析を行うことにより得た。これを発現ベクタ-(pcDNA3.1)にライゲ-ションし,大腸菌に形質転換したのち,大腸菌のプラスミドを抽出・精製し,rIFNベクター(pcDNA3.1-JF-rIFN1)を構築した。ヒラメにpcDNA3.1-JF-rIFN1を15 ug/50 uL/尾ずつ筋肉内接種し,水温20℃および10℃でそれぞれ飼育する実験区を設けた。また,両温度についてpcDNA3.1あるいはPBSを用いて同様に処理する対照区を設けた。IFN関連遺伝子の発現は,各区から接種0,3,6,12,24,96時間後,3,5,7日後に3尾ずつを無作為に取り上げ,筋肉(注射部位)および頭腎を採材して核酸抽出後,リアルタイムPCRによる相対定量を行って解析した。 その結果,実験区におけるIFN関連遺伝子の発現量は20℃では3日後に増加し,その値が7日後まで維持されるが,10℃では7日後に増加する傾向が認められた。以上の結果から,水温はヒラメのIFN関連遺伝子の発現に影響を及ぼしていることが強く示唆された。また,構築したrIFNベクターは,ヒラメの免疫機構の解明に有用であると思われる。
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