研究課題/領域番号 |
16K07844
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松下 吉樹 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (30372072)
|
研究分担者 |
菅 向志郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (60569185)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ケンサキイカ / 餌生物 / 共食い / 高次生物 / DNA分析 |
研究実績の概要 |
2017年6月から8月の間に東シナ海から日本海西部において,定置網(人工光無し,朝),底びき網(人口光無し,日中),イカ釣り(人口光有り,夜間)で漁獲されたケンサキイカ254個体を採集した。これらの採集個体の空胃率は,採集時刻や漁業種類よりもむしろ採集場所の水深によって異なる傾向が見られた。すなわち,沖合域の2点(釣りとトロール)で採集された個体の空胃率はいずれも80%以上であったが,沿岸域の4点(釣りと定置網)では33~69%の間であった。このことは沿岸域におけるケンサキイカの餌入手のし易さに関係するものと考えた。 検鏡による観察では多くの胃内容物は門や綱レベルまでしか分類できなかった。この胃内容物をDNA分析によって同定したところ,魚類,甲殻類,頭足類を含む36種に同定された。今年度に新たに確認された餌生物にはヒラソウダ,キシエビなどがあげられる。これらの構成も漁業種類(水深)と採集場所(位置)で異なる傾向が見られた。五島列島周辺海域のイカ釣りではキビナゴやイワシ類,日本海西部の定置網ではマアジやイワシ類などの浮魚類が多かった一方,東シナ海のトロール漁業ではトラギスなどの底魚類が多く見つかった。共食いの割合は10~30%であったが,昨年度までの結果とは異なり,漁業種類や採集場所による違いは認められなかった。 以上の結果からケンサキイカの食性(餌選択性)が日和見的である可能性がより強く示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標のひとつである摂餌後の経過時間を推定する方法の確立には至っていない一方で,今年度は254個体を採集して分析したことで,次年度に予定していた地理情報システムにケンサキイカ採集場所を時期や時間帯,漁獲方法で分け,本種が利用可能な餌生物の時空間分布を示す作業に一部着手することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度もケンサキイカ胃内容物採集については漁業者や練習船の協力を取り付けることができているので,引き続き採集個体の数を増やすことで信頼度の高い結果を得てゆきたい。また摂餌後の経過時間を推定する方法について研究を進めるとともに,これまでの結果をまとめて論文として発表する準備を進める予定である。
|