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2018 年度 実績報告書

天然河川におけるニホンウナギの生理生態学的解析に基づいた資源動態モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 16K07851
研究機関北里大学

研究代表者

吉永 龍起  北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (30406912)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードニホンウナギ / 接岸生態 / 塩分適応 / グリコーゲン
研究実績の概要

ニホンウナギの養殖は天然のシラスウナギに依存しているものの,漁獲量は減少の一途にある.資源の回復には,河川に加入する時期や量を把握することに加え,質の評価も重要である.ニホンウナギは,河川への加入後も汽水域や沿岸を成長の場として利用できる優れた浸透圧の調節機構を持っている.そこで本研究では,まずシラスウナギの接岸パタンの年変動を明らかにした.続いて,鰓で浸透圧調節を行う塩類細胞の形態的変化や各種イオン輸送体の発現パタンを調べることで,自然環境下における塩分適応能を検討した.さらに,環境変化に応じた適応機構においてエネルギー源として利用されるグリコーゲン量の比較も行った.
2009および2010年級群で見られた初夏の来遊群は,その後もおよそ2年に1度の頻度で小さな規模で見られた.接岸は概ね12月から翌年の4月にかけてであり,年による変化はなかった.一方,2017年級群は3月のごく短期間にのみ集中して接岸する特異なパタンを示した.
早期変態期,シラスウナギ期,淡水クロコ期,汽水クロコ期, および黄ウナギ期の標本について,塩類細胞の相対面積を比較したところ,環境塩分を反映して大きさが変化することがわかった.シラスウナギ期では接岸時期を通して塩類細胞の体積は一定であったものの,同時に接岸した群には様々な大きさの細胞を持つ個体が含まれていた.小型の塩類細胞を持つ個体はより早く淡水適応を開始したと考えられ,こうした個体差が広い塩分の環境を成長の場として利用するニホンウナギの回遊多型をもたらしているものと考えられた.
各月の接岸群のグリコーゲン含量は,接岸時期が遅くなるほど少なくなった.2017年級群は,他の年級群に比べて来遊が著しく遅れる特異的なものであった.したがって,輸送を妨げる何らかの要因により接岸までの時間がかかり,多くのグリコーゲンが消費されていた可能性が考えられた.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (11件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Dispersal characteristics and pathways of Japanese glass eel in the East Asian Continental Shelf2019

    • 著者名/発表者名
      Han Y-S, Hsiung K-M, Chow L-Y, Zhang H, Tzeng W-N, Shinoda A, Yoshinaga T, Hur S-P, Hwang S-D, Iizuka Y, Kimura S
    • 雑誌名

      Sustainability

      巻: 11 ページ: 2572

    • DOI

      10.3390/su11092572

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Mucosal galectin genes in all freshwater eels of the genus Anguilla2019

    • 著者名/発表者名
      Tsutsui S, Yoshinaga T, WatanabeS, Aoyama J, Tsukamoto K, Nakamura O
    • 雑誌名

      Journal of Fish Biology

      巻: 94 ページ: 660-670

    • DOI

      10.1111/jfb.13936

    • 査読あり
  • [学会発表] ニホンウナギの河川接岸時における塩類細胞とグリコーゲン量の動態2019

    • 著者名/発表者名
      小川郁未,古川史也,篠田 章,筒井繁行,阿見彌典子,吉永龍起
    • 学会等名
      東アジア鰻学会 第2回研究発表会
  • [学会発表] ニホンウナギの生物学的特性と接岸生態に生じた長期的な変化2019

    • 著者名/発表者名
      呉 青逸,吉永龍起,塚本勝巳,篠田 章
    • 学会等名
      3. 東アジア鰻学会 第2回研究発表会
  • [学会発表] ニホンウナギの河川加入時における塩類細胞の変化2018

    • 著者名/発表者名
      小川郁未,古川史也,篠田 章,筒井繁行,阿見彌典子,吉永龍起
    • 学会等名
      日本水産学会秋季大会
  • [学会発表] 初期生活史解析に基づくニホンウナギの接岸機構の解明2018

    • 著者名/発表者名
      呉 青逸,吉永龍起,塚本勝巳,篠田 章
    • 学会等名
      日本水産学会秋季大会
  • [学会発表] ニホンウナギの河川生活期における塩類細胞の動態2018

    • 著者名/発表者名
      小川郁未,古川史也,篠田 章,筒井繁行,阿見彌典子,吉永龍起
    • 学会等名
      日本水産増殖学会第 17 回大会
  • [学会発表] ニホンウナギの初期生活史と海洋環境2018

    • 著者名/発表者名
      呉 青逸,吉永龍起,塚本勝巳,篠田 章
    • 学会等名
      日本水産増殖学会第 17 回大会
  • [学会発表] 鰻川計画: シラスウナギの数と質2018

    • 著者名/発表者名
      小川郁未,古川史也,篠田 章,筒井繁行,阿見彌典子,吉永龍起
    • 学会等名
      うな丼の未来VI -世界の中のニホンウナギ
  • [学会発表] ニホンウナギの初期生活史の年変動2018

    • 著者名/発表者名
      呉 青逸,吉永龍起,塚本勝巳,篠田 章
    • 学会等名
      うな丼の未来VI -世界の中のニホンウナギ
  • [学会発表] DNAクロマトを用いたニホンウナギの判別法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      リズティアン,中曽 譲,桝本峻行,緒方京子,高崎一人,布藤 聡,吉永龍起
    • 学会等名
      日本水産学会春季大会
  • [学会発表] ニホンウナギの河川加入時における生理・生態的変化:塩類細胞の動態2018

    • 著者名/発表者名
      小川郁未,古川史也,篠田 章,吉永龍起
    • 学会等名
      東アジア鰻学会 第1回研究発表会
  • [学会発表] 種子島に接岸したニホンウナギの初期生活史にみられる15年間の変動2018

    • 著者名/発表者名
      呉 青逸,吉永龍起,塚本勝巳,篠田 章
    • 学会等名
      東アジア鰻学会 第1回研究発表会
  • [図書] ウナギの科学(塚本勝巳 編)2019

    • 著者名/発表者名
      吉永龍起
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      ISBN978-4-254-48502-8

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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