研究実績の概要 |
水深50m以浅の沿岸域に生息する小型鯨類スナメリの鹿島灘・九十九里浜沖個体群の育児海域を推定することを目的として,2018年4月から7月にかけて,月に1~2回飛行機目視調査を実施した.調査コースは,2016年の予備飛行を経て確定し,2017年から飛行しているコースで,茨城県高萩から千葉県御宿にいたる水深20m以浅の海域に南北方向に2本設定したものである(片道約200km).総飛行距離は2000kmで,すべての調査でスナメリを発見した(342群677頭).調査コースの南北両端付近での発見は少なかった.とくに親子は,全年度の結果を合わせて,調査コースの北端から20km地点と南端から25km地点までの間でのみ発見された.茨城・千葉沿岸域に生息するスナメリが仙台湾個体群とは別個体群である可能性を支持する結果となった. 2018年度の結果はそれ以前の結果と大きく矛盾することはなかった.すなわち,親子は岸寄りのコースでの発見が多く,九十九里浜周辺での発見は散発的であった.海域別(鹿島灘,銚子周辺,九十九里浜周辺)の親子の遭遇率(単位飛行距離あたりの発見頭数)は銚子周辺で高く九十九里浜周辺で低かった.親子の遭遇率は5月から6月に高くなる傾向が見られた.親子の割合は5月から7月にかけて増加傾向にあり,9~11%であった.親子を含む群れは,親子を含まない群れと比べて,岸から近い海域,水深50mの等深線より遠い海域で発見される傾向にあった.親子にとって水深20m以浅の海域で,場所によっては岸よりの海域が重要であることが明らかになった. 月別の平均群れサイズは4月が最低で(1.2頭),夏に向かって大きくなった.6月以降に7頭以上の群れが9群出現し(最大群れサイズは61頭),夏に向かってスナメリが大群を形成することがわかった.
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