研究課題/領域番号 |
16K07856
|
研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
佐野 稔 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部稚内水産試験場, 主査 (80523539)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 海洋生態 / 水産資源 / 頭足類 / ミズダコ |
研究実績の概要 |
(1)天然の産卵巣穴における環境条件の把握:ミズダコの産卵場である羅臼町沿岸において、水温ロガーおよび流速計をもちいて観測した結果、水深20m付近で抱卵期間中の水温は-1.3~18.0℃、流速は1~459mm/sの範囲であった。さらに、溶存酸素ロガーおよび照度ロガー用いてミズダコが抱卵している巣穴の溶存酸素濃度、照度を計測したところ、巣穴内部では溶存酸素濃度は低下したあとに巣穴外側と同じ濃度まで回復する変化を繰り返した。照度は巣穴内部ではほとんど無かった。巣穴外側の画像データを取得し3次元計測を試みたところ、撮影角度により計測できない範囲が生じる課題が確認されたので、撮影方法を改善して再度画像データを取得した。 (2)産卵後の雌親の生存期間と水温との関係解明:水温調節可能な大型水槽を用いて、カゴ内にミズダコを収納し、産卵させた。その後、定期的に抱卵している雌親の体重を計測したところ、産卵直後の2ヶ月間は急激に体重が減少したが、その後、水温に関わらず体重は横ばいで推移した。摂食量は少ないものの、抱卵期間中も時折摂食していた。 (3)卵の生残・孵化に及ぼす水温の影響の解明:ミズダコが産卵した卵を抽出して、水温別に設定した小型水槽内で卵をふ化培養した結果、ミズダコ卵は、20℃以上の高水温、2℃以下の低水温では発生が進まなかった。ふ化から数日以内のミズダコ浮遊幼生の生存率は7℃をピークに水温が高くなるほど低下した。 (4)潜在的産卵場の推定と産卵巣穴の探索:試験調査船北洋丸により、8月に宗谷海峡において水中ロボットカメラを用いて産卵巣穴を探索したが、ミズダコは確認されたが抱卵している巣穴の発見には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)天然の産卵巣穴における環境条件の把握:計画通りに、産卵場の水温、流速観測、巣穴内外の溶存酸素濃度、照度について4箇所の抱卵巣穴のデータを取得した。巣穴の3次元計測については、撮影方法を改良して画像データを取得した。 (2)産卵後の雌親の生存期間と水温との関係解明:計画通りに、飼育試験により抱卵中の雌親3個体について、体重の変化を把握した。 (3)卵の生残・孵化に及ぼす水温の影響の解明:計画通りに2個体の雌親から卵を抽出し、水温別の孵化培養試験を行った。 (4)潜在的産卵場の推定と産卵巣穴の探索:計画通りに、宗谷海峡において水中ロボットカメラを用いて産卵巣穴調査を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)天然の産卵巣穴における環境条件の把握:前年度同様に、産卵場の水温観測、流速観測、巣穴内外の溶存酸素濃度、照度を計測して、データを積み重ねていく。巣穴の3次元計測についても、改良した撮影方法にそって、画像の取得を進めて行く。 (2)産卵後の雌親の生存期間と水温との関係解明:前年度と同様に飼育試験を行い、標本数を増やす。 (3)卵の生残・孵化に及ぼす水温の影響の解明:前年度と同様に飼育試験を行い、標本数を増やす。 (4)潜在的産卵場の推定と産卵巣穴の探索:前年度と同様に探索調査を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
冬期間に羅臼町へ研究の打ち合わせへ行く予定であったが、悪天候により打ち合わせにいけなかったため、残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
生じた残額は、ミズダコ卵のふ化培養試験が年度をまたぐ見通しとなったため、これらの培養試験の消耗品の購入にあてる計画である。
|