研究期間全体:サケ稚魚放流魚は、個体間の干渉型競争ではサクラマス稚魚野生魚よりも劣位であるが、実際に放流された場合は、個体数がサクラマスよりも圧倒的に多いので、消費型競争を通じて、サクラマス稚魚の採餌効率や成長の低下を引き起こすことが野外調査より示唆された。河川に放流されたサケ稚魚やサクラマス稚魚のうち、相対的に小型の個体が魚食性魚類に捕食されやすいことを示した。これは、小型個体の方が遊泳速度など、捕食者回避能力に劣るためであろう。視覚的障害物をはじめ流速等の河川の物理環境が一連の結果に及ぼした影響は、検出できなかった。これは物理環境の影響をマスクするほどに放流魚の密度が高かったためと考える。
最終年度:本研究課題の成果として論文化した内容も含め、さけますの野生魚と放流魚間あるいは在来種と外来種間に生じる相互作用(競争、食う-食われるの関係)に関するレビューを執筆した。本レビューは、英文書籍「Ecology of Stream Dwelling Salmonids」のチャプターの一つとして掲載に向けて編集中である。
|