研究課題
平成25年度の科学研究費助成金事業において、マガキ抽出物が酸化ストレスが要因となって発生する疾病、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、そのモデルマウスを用いた実験において、効果的に疾病発症を抑制した。このことはマガキ抽出物の抗酸化物質により酸化が抑制され、発症が抑制されたものと考えられる。近年、食品中における「Keap1-Nrf2経路」を活性化する間接抗酸化物質の研究が報告されるようになってきたが、マガキ抽出物における同物質の報告はない。本研究はマガキ抽出物よりcolumn chromatographyと「Keap1-Nrf2経路」を活性化を観察できるリポータージーンアッセイを用いて、同物質の探索を行うことを目的とした。平成28年度に確立した「リポータージーンアッセイ」を用いて、マガキ抽出物をカラムA、カラムB、カラムCで分画した画分をスクリーンニングした結果、活性の高い疎水性の物質A、Bを単離した(特許申請の準備中)。両物質の同定を行った結果、今まで報告されていない新規の抗酸化物質であった。次に、両物質の化学的合成を行い、ヒト肝培養細胞(C3A)を用いて、細胞毒性、酸化剤に対する細胞生存能、「Keap1-Nrf2経路」の活性化を観察した。その結果、物質Aは低い細胞毒性、高い細胞生存能、及び高い「Keap1-Nrf2経路」の活性化能を有していた。またC3A細胞に物質Aを添加して、Nrf2活性化による下流の抗酸化遺伝子群の発現を観察した結果、NQO1、GSTP、GSH合成酵素を初め、10種類の抗酸化酵素の発現を確認した。これらのことから、単離・同定した物質AはNASHモデルマウスにおいて、疾病抑制に起因した間接抗酸化物質の一つであると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
大学院生が積極的に実験に協力してくれたこともあり、当初の計画よりも大幅に進展した。
カラムCで単離・同定し、化学合成した物質A、Bの細胞毒性を観察した結果、物質Aは低い細胞毒性、物質Bは高い細胞毒性を示した。両物質の構造的な相違は、両物質の共通骨格の3位における官能基の有無であった。平成30年度はより有用性の高い間接抗酸化物質を求めて、同骨格3位に異なった官能基を持つ4種の類似体を化学合成し、細胞毒性、リポータージーンアッセイ、細胞生存能試験を行う。これらの結果をまとめ、論文投稿を行う。
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Journal of Functional Foods
巻: 35 ページ: 245-255
10.1016/j.jff.2017.05.039
https://www.hs.hokudai.ac.jp/organization/food_and_nutrition_for_health_promotion/