研究実績の概要 |
平成25年度の科学研究費助成金事業において、酸化ストレスが要因となって発生する疾病である「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」のモデルマウスを用いた実験で、マガキ抽出物が効果的にその疾病発症を抑制した。このことはマガキ抽出物中の抗酸化物質により酸化が抑制され、発症が抑制されたものと考えられる。近年、食品中における「Keap1-Nrf2経路」を活性化する間接抗酸化物質と疾病との研究が報告されるようになってきたが、マガキ抽出物における間接抗酸化物質の報告はない。 本研究は「Keap1-Nrf2経路」の活性化を観察できるリポータージーンアッセイを用いて、マガキ抽出物より間接抗酸化物質の探索を行うことを目的とした。マガキ抽出物をカラムA、カラムB、カラムCで分画した画分をリポータージーンアッセイを用いて、スクリーンニングした結果、活性の高い疎水性の物質Aを単離した(特許申請の準備中)。物質の同定を行った結果、今まで報告されていない新規の抗酸化物質であった。一方、すでにORAC(活性酸素吸収能力)法により、マガキ抽出物より3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol (DHMBA)を単離・精製し、その化学的合成法を確立している。「化学合成したDHMBAにおいて同活性を観察した結果、濃度依存的に「Keap1-Nrf2経路」の活性化を観察した。次に、日本における12-13地域のマガキ中の物質A及びDHMBAの濃度を測定した。その結果、マガキ抽出物中の物質A 及びDHMBAの濃度はそれぞれ5.40-149 ng/g, 9.80-58.8 micro g/gと、DHMBAは物質Aと比較し、約1,000倍高濃度であった。これらの結果から、NASHモデルマウスにおいて疾病発症を抑制した物質はDHMBAと考えられた。
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