研究課題
平成29年度は、キンギョのウロコを用いたin vitroの解析とヒラメのウロコを用いたin vivoの解析を行った。以下に示す。1)キンギョのin vitroの解析では、骨芽細胞と破骨細胞の相互作用に関与する遺伝子(RANKL及びOPG)の解析を行った。10日間再生させたキンギョの再生ウロコを用いて培養実験を実施した。即ち、MSH(10-6 M)を培地に添加して3時間培養した結果、RANKL(骨吸収促進)及びOPG(骨吸収抑制)の発現が有意に上昇したが、RANKLの発現量の上昇率が大きく、RANKL/OPGが有意に上昇して骨吸収を促進することが判明した。さらに培養6時間において破骨細胞で発現している機能遺伝子であるカテプシンKの発現が有意に上昇させ、骨吸収を促していることもわかった。2)ヒラメのウロコで発現している時計遺伝子(period1, period2及びcry1)の発現を有眼側の櫛鱗と無眼側の円鱗で比較した。その結果、夕方(18時)及び夜間(24時)において、period1、period2及びcryの遺伝子発現が櫛鱗の方が円鱗と比較して高い値を示した。したがって、櫛鱗の方が時計遺伝子の感受性がよい可能性がある。3)ヒラメのin vivoにおいて、円鱗から櫛鱗への変化を追うことができる系を分担者の鈴木(東北大)に作成していただいた。無眼側において、尾から順に色素沈着が生じる。その色素沈着のあと、棘が1本出て、櫛鱗へと変化することがわかった。そこで、円鱗から櫛鱗への変化に伴う時に、MSHの受容体や時計遺伝子などの遺伝子発現を解析することにより、円鱗から櫛鱗への変化するときに関与する遺伝子を調べていく予定。
2: おおむね順調に進展している
キンギョのin vivo及びin vitroの解析結果は、2018年3月にGeneral and Comparative Endocrinologyに受理され、2018年4月に出版した。さらにヒラメの円鱗から櫛鱗への分化については、論文準備中であり、近いうちに投稿予定である。以上のことから、おおむね順調であると判断した。
キンギョにおいては、MSHとカルシトニンとの関連を調べるために、カルシトニンの分泌源である鰓後腺にMSHの受容体(MCR)が発現しているのか否かを調べる。また、MSH投与による血液中のカルシウム濃度の変化とカルシトニンの分泌との関連についても調べて、MSH、カルシトニン及びカルシウムとの関連性を調べる。ヒラメのin vivoでの円鱗から櫛鱗への分化機構について、次世代シークエンス解析を行い、時計遺伝子やホルモン分子も含めて円鱗から櫛鱗への分化機構を網羅的に解析する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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