研究課題
平成30年度は、MSHとカルシトニンとの関連を調べ、さらに次世代シークエンス解析により、ヒラメの円鱗から櫛鱗への分化機構を調べた。以下に示す。① キンギョの雌雄の鰓後腺からmRNAを抽出して、MSHの受容体(MCR)の発現を解析した。その結果、雄及び雌において、個体間でそれぞれのMCRの発現レベルは変動していたが、全てのサブタイプ(MCR1, MCR2, MCR3, MCR4及びMCR5)が検出された。② MSHのカルシウム代謝に及ぼす影響を調べるため、MSH投与による血液中のカルシウム濃度とカルシトニンレベルの変化を調べた。その結果、血液中のカルシウムに応答して鰓後腺からカルシトニンが分泌されていることを証明でき、さらに血液中のカルシウム濃度と血液中のカルシトニンとの間に有意な正の相関があることがわかった。③ ヒラメの色素沈着と円鱗から櫛鱗への分化機構を調べるため、次世代シークエンス解析を行った。尾部に沈着した色素は、頭部に向かって色素沈着が生じた。尾部から頭部に向かって4か所の部位で次世代シークエンス解析を行った結果、色素沈着が生じる割合が高いほど、骨形成遺伝子(runx2, bmp2, col1a1, col1a2など)と破骨細胞のマーカー(TRAP、CTSK)の遺伝子発現量が低い値を示した。さらに、これらの発現パターンと同じ傾向が、時計遺伝子(per1, per2, cry1, cry2)でも観察された。したがって、時計遺伝子による骨代謝関連遺伝子の制御が行われている可能性を示している。一方、骨芽細胞で発現しているcalcitonin receptor-like receptorやビタミンDホルモン受容体は、色素沈着部位で高い値を示していた。以上の結果は、色素沈着により時計遺伝子や骨代謝関連ホルモンが相互に作用して櫛鱗を形成している可能性が高いことを示している。
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