二枚貝の貝柱などを構成する平滑筋はエネルギーをほとんど消費しないで長時間にわたって張力を維持するキャッチ収縮を行う。その分子機構を明らかにすることを目的として、本研究では細いフィラメントに関連したタンパク質に着目し、その役割を解析することとした。本年度は、トロポミオシンとトゥイッチンの相互作用について解析した。トゥイッチンはキャッチ収縮の制御タンパク質であるが、D1とD2と呼ばれるcAMP依存性キナーゼによってリン酸化される部位が存在する。これまでにD2部位の機能については詳細に解析が行われているが、D1部位の機能については解析がほとんどされていない。D1部位ついては細いフィラメントと相互作用する可能性が示唆されているため、本研究では、細いフィラメントの構成成分であるトロポミオシンとトゥイッチンD1部位の相互作用について解析した。 トロポミオシンと、トゥイッチンはD1部位を含む領域を大腸菌発現系を用いて合成した(TWD1)。それぞれの精製標品を用いて等温滴定カロリメトリ(ITC)解析を行った。その結果、トロポミオシンとTWD1が結合するというデータは得られなかった。それぞれの濃度を変えてITC解析を行っても同様であった。また、キャッチ筋筋原線維タンパク質に対して、TWD1をプローブとしたウェストウェスタン解析を行ったところ、TWD1はやはりトロポミオシンと結合性を示さなかった。 以上の結果から、トロポミオシンとトゥイッチンD1リン酸化部位は相互作用しないと結論した。
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