研究課題/領域番号 |
16K07874
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
斎藤 大樹 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授(特定教員) (90396309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / 生殖系列キメラ / 借腹生産 |
研究実績の概要 |
一年目の大きな目的は、2年目以降に用いる「生殖系列キメラ」を大量に作出することであった。本実験では、体細胞の違いによる生殖細胞への影響、すなわち「代理親効果」を明らかにするため、生殖系列キメラおよびその作出に用いたドナーそれぞれを飼育し、成熟させる必要がある。今年度は、この目的のため、パールダニオの始原生殖細胞(Primordial germ cells: PGCs)を移植したゼブラフィッシュ生殖系列キメラを作出した。ドナーであるパールダニオのPGCsをGFP-buc mRNAを顕微注入した後、顕微鏡下でdnd遺伝子に対するモルフォリノオリゴの顕微注入により不妊化したゼブラフィッシュ宿主胚に移植した。蛍光顕微鏡によりドナーPGCsの局在を観察したとこと、移植されたPGCsの一部は、宿主の生殖腺へ到達し定着していた。現在、このようにした作出したドナーおよび宿主双方を飼育し、配偶子を採取すべく継続飼育中である。また、セルソーターを用いてGFP-buc標識されたPGCsを効率的に分取する方法も検討し、分取細胞した細胞を宿主に移植することにより生殖系列キメラを作出できることを明らかにした。ただし、生産したキメラおよびドナー個体の生残率が低いことから、さらなる移植実験を行うことで必要なサンプル数を確保する必要がある。貴重なキメラからの精子および未受精卵を採取する手法について検討し、親個体を殺すことなく安定的に採取できる手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の大きな目的であった生殖系列キメラの作出は行えているものの、実験の実施回数が比較的少なかったことと、キメラ及びドナーの生存率が低く、想定していたよりもサンプルが少ない状態にある。原因の一つとして、飼育水槽のコンディションが悪化し、実験遂行が困難になった時期があったことが挙げられる。特にドナーであるパールダニオの採卵が芳しくなかった。今後は飼育体制を見直すとともに、更に移植実験を追加することで、解析に用いるための生殖系列キメラの確保に努める。
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今後の研究の推進方策 |
生殖系列キメラおよびそのドナーが成熟すれば、ただちに配偶子を採取し、各種解析を行う。それまでは、生殖系列キメラの飼育と、キメラの作出を継続して行う。メスよりもオスの成熟が早いことが考えられるため、まず、オスのキメラ個体から得られる精子の解析を行う予定である。Computer assistes sperm analysis (CASA)により精子の運動性を実験群とコントロール群で比較したのち、走査電子顕微鏡により形態の違いを詳細に観察する。精子が採れる限り複数回の実験を行い、その結果を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験の大部分は生殖系列キメラを作出することであった。一旦必要な試薬や道具を整備すれば、科研費を全て使うような状況にはならなかった。一方、次年度以降の研究には消耗品の大量消費が考えられると同時に、研究成果の発表等の旅費もかさむと考えられた。そのため、残額分は次年度に持ち越し使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分は解析のための消耗品(特にCASA解析用の特殊スライドグラス購入など)に用いる予定である。
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