研究課題
シアノバクテリアのmicrocystis属などが産生する「肝臓毒マイクロシスチンLR」に関するこれまでの研究で,有機陰イオン輸送体OATP1B1およびOATP1B3の発現の有無が毒性発現を決定づけ,さらにマイクロシスチンLRに特異的で新奇な毒性としてアノイキス抵抗性の誘導能を明らかにしている。そこで,様々な効能を示す生薬に着目し,マイクロシスチンLRの毒性抑制能を有す成分の探索,(検討項目1)ならびにアノイキス抵抗性の発現機序の詳細な解析(検討項目2)を行った。検討項目1:マイクロシスチンLRおよびファロイジンに対して感受性を示す培養細胞のHEK293-OATP1B1またはHEK293-OATP1B3を用い,マイクロシスチンLRの毒性発現を抑制し得る生薬の探索を行った結果,キンオウシ,イワジシャ,オウレン等の生薬抽出物に効果が得られた。そこで最も高い効果を示したイワジシャの主成分であるアクテオシドを用いた解析により,アクテオシドは,OATP1B1またはOATP1B3を介したファロイジンまたはマイクロシスチンLRの細胞内輸送を阻害することにより,細胞毒性の発現を抑制した。検討項目2:HEK293細胞のような接着細胞は,足場から剥離・浮遊するとアノイキスで死滅する運命を辿るが,胚発生の原腸陥入およびがんの転移などではアノイキス抵抗性を示す。マイクロシスチンLR曝露後に剥離・浮遊する細胞が再接着する現象,すなわちアノイキス抵抗性について,解析した結果,低酸素抵抗性を獲得していることが判明した。また,平成29年度計画の一部の解析を開始し,アノイキス抵抗性細胞からのマトリクスメタロプロテアーゼの分泌が活性化することを突き止めた。
2: おおむね順調に進展している
マイクロシスチンLRの毒性の抑制能をもつ物質の探索において,当初予定より早くヒット化合物を発見できたために,その活性成分化合物の機能評価を進めている。また,マイクロシスチンLR誘導型アノイキス抵抗性細胞の性状解析を進めるなかで,ハイポキシア抵抗性の獲得を発見した。現在,ハイポキシア抵抗性の発現に関する分子機序およびその他の性状解析を進めている。
生薬イワジシャならびにその主成分のアクテオシドにマイクロシスチンLRの細胞毒性の抑制能が検出されたので,当初の計画を多少変更し,アクテオシドの機能発現について詳細な分子機序の解析を進める。また,マイクロシスチンLR誘導型アノイキス抵抗性細胞のハイポキシア抵抗性の発現分子機序の詳細な解析を進める。
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