これまでに90種以上の若狭湾産藻類を採集した。それらの試料を用いて粗抽出液を作製し、抗炎症性に関してスクリーニングを行った。新奇な抗炎症成分発見を期待して紅藻類に直目して成分の精製・構造解明に関する実験を試みたが、平成29年度までにおいては、残念ながらこれまでに分離・同定した成分は既知のものであった。平成30年度において比較的強い抗炎症活性を有するとともに、これまでに抗炎症性に関して報告されていない二つの藻類について検討する予定であったが、対象海藻を十分に採集することができなかった。そこで、令和元年度も対象海藻の採集に努め、活性成分の分離・精製条件を検討した。 スクリーニング実験で一定の抗炎症活性を示し、これまで抗炎症性に関する報告の無い褐藻類1種および緑藻類1種を対象に実験を進めた。これらの海藻類が示した抗炎症活性を再確認し、更なる作用機序の解明および成分の分離・特定による有効活用を目標として、各試料の成分がNOおよびTNF-αの産生・放出にどのような効果を示すかを検討した。褐藻は、一定の濃度から障害性を示したが、障害性の無い濃度でNO産生抑制効果を示した。緑藻は、細胞に障害を与えず、NO産生抑制効果を示した。また各試料は、細胞培養上清中のTNF-α濃度を減少させる効果を示した。しかし、褐藻は、障害性を示す濃度から効果を示したため、TNF-αへの効果を明らかにすることができなかった。 令和元年度対象海藻の採集に努め、活性成分の分離・精製条件を検討した。その結果、活性成分の部分精製に成功した。今後は完全精製するとともに、成分の構造解析を行う必要がある。
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