研究実績の概要 |
平成29年度研究においては,主に効率よくコイT細胞クローンを得る方法の確立を目指した.すなわち,T細胞増殖因子であるコイ・インターロイキン2(IL-2)の組換えタンパク質を作製し,コイT細胞への増殖効果の有無を測定した. コイは2種類のIL-2遺伝子(IL-2A,IL-2B)を有しているが,これらの遺伝子をクローニングし,大腸菌によるタンパク発現系を用いてIL-2AおよびIL-2Bの組換えタンパク質(rcIL-2A,rcIL-2B)を作製した.これらコイIL-2の活性は,申請者らがすでに確立しているコイT細胞培養系を用いて調べた.すなわち,コイのリンパ組織でもある腎臓から白血球を分離し,支持細胞(ギンブナ胸腺由来 GTS9細胞株)上に播種すると,ヘルパーT細胞(Th)が選択的に増殖する.これらTh 細胞を回収し48 穴プレートに 1×105個/mL の濃度で播種し,これに rcIL-2AまたはrcIL-2B を終濃度 0, 1, 10, 100 および 1000 ng/mL になるよう加え、30℃、5%CO2存在下で培養した. rcIL-2AおよびIL-2Bとも,1 ng/mL 以上の濃度でコイ Th 細胞の活発な増殖が認められた.特に,100 ng/mLのrcIL-2 存在下で最大の細胞増殖効果を示した.すなわち,無処理群においては,培養9日目までに培養開始時の細胞数の約1.45 倍の細胞増殖しか認められなかったのに対し,100 ng/mLのrcIL-2存在下においては,当初の細胞数の約 2.7 倍まで細胞増殖が認められた. コイ IL-2は哺乳類のIL-2と同様にTh細胞へ作用し,増殖を促進することがわかった.
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