研究実績の概要 |
平成29年度研究においては,効率良くコイT細胞クローンを得るため,哺乳類においてT細胞増殖因子として働くIL-2のホモログ遺伝子,コイ・インターロイキン2(IL-2AおよびIL-2B)の組換えタンパク質を作製し,これらがコイT細胞に対して増殖効果があることを確認した. 平成30年度は,更に効率良くT細胞クローンを得る方法として,コイKit ligand(Stem cell factor, c-kit)の組換えタンパク質を作製し,現在,その効果を検討中である.Kit Ligandは哺乳類において比較的未分化な造血前駆細胞に働き,様々な種類の血液細胞の増殖に促進的に働く.我々の以前の研究においても,コイの赤血球造血因子(EPO)やコイ血小板/栓球造血因子(TPO)がKit Ligandと相乗的に働き,これらの造血を促進することがわかっている.そこで現在,コイIL-2とKit Ligandを組み合わせることで,T細胞を含むリンパ球系の前駆細胞への増殖効果を調べている.また,哺乳類において,Th2サイトカインとして知られている,IL-5の生理活性を調べるため,ゲノムシンテニーを利用してコイIL-5様遺伝子を独自に見出した.このコイIL-5の組換えタンパク質を作製し効果を調べたところ,コイIL-5はコイの好塩基球/好酸球の増殖を刺激することがわかった.哺乳類においてもIL-5は好酸球分化因子として知られているが,このことにより,コイのIL-5も類似の機能を有している可能性が示唆された.
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