研究実績の概要 |
1.これまでの研究から、Edwardsiella tarda感染初期のヒラメ脾臓で発現しているLTB4およびIL-1βが肝門脈から肝臓に流入し、病魚肝臓の炎症反応を誘導していることを予想した。今回、安静時のヒラメ脾臓から分離された白血球およびヒラメ鰭由来細胞株(JFF07-1)に対する両分子の生物活性を調べた。LTB4(20110, Cayman)(10 ng/mL~0.1 ng/mL)またはIL-1β(大腸菌組換体)(100 ng/mL~1 ng/mL)刺激後、IL-8遺伝子またはIL-1β遺伝子の発現変化を解析した結果、LTB4の生物活性は確認できなかった。一方、IL-1βは白血球を活性化し、IL-1β遺伝子の発現上昇を誘導した。E. tarda感染初期に誘導される炎症性メディエーターの中で、少なくともIL-1βはオートクラインまたはパラクラインの作用で脾臓におけるIL-1βの生合成を高めていることを示唆した。今後、異なる細胞種に対する作用を調べ、各分子の生物活性について引き続き検討する。 2. これまでの研究から、ARAおよびEPA・DHA由来生理活性脂質の量的変化がE. tarda感染初期のヒラメ脾臓および肝門脈血清中で生じていることを明らかにした。また、同脾臓において生理活性脂質代謝酵素である5-LO遺伝子およびLTA4H遺伝子が検出された。今回、E. tarda感染初期のヒラメ脾臓におけるこれら酵素遺伝子の発現変化を調べたところ、5-LO遺伝子の顕著な発現低下が見られた。一方、LTA4H遺伝子はわずかに発現上昇する傾向が見られた。今回観察された5-LO遺伝子の発現低下は同時期に生じたEPA・DHA由来生理活性脂質の減少に関与し、LTA4H遺伝子の発現上昇は感染初期の脾臓で生じたLTB4の上昇に関与しているものと思われた。
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