研究課題/領域番号 |
16K07884
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
山本 祥一郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (20392897)
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研究分担者 |
佐藤 俊平 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, グループ長 (70425461)
森田 健太郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (30373468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サケ科魚類 / 系統地理 |
研究実績の概要 |
今年度はアジアから北米にいたる環太平洋一帯に広く分布するサケについて、比較系統地理的分析の一助とするため、保存してある北米系サケ8集団(南東アラスカ6集団、ブリティッシュコロンビア(BC)2集団)についてSNP分析を行い、既存の北米系サケ集団のデータとあわせて集団遺伝学的な再解析を行い、日本系およびロシア系サケ集団と比較した。その結果、分析した8集団のヘテロ接合度の期待値(He)とアレリックリッチネス(AR)の平均は、いずれも北米系サケ集団全体の値よりは小さかったが、既存の南東アラスカ集団およびBC集団とは同程度の値を示した。近隣結合法による集団系統樹を作成したところ、分析集団は基本的に既存の南東アラスカ集団およびBC集団と同じ位置にそれぞれクラスタリングされた。また、既存の日本系およびロシア系サケ集団のデータと比較したところ、分析集団のHeとARはともに日本系サケ集団の平均より高かったものの、ロシア系サケよりは低い傾向を示した。サクラマスでは、一部の集団についてミトコンドリアDNA(mtDNA)塩基配列分析およびマイクロサテライトDNA(msDNA)分析を実施し、これまでに収集したロシア、日本、台湾からの合計55集団1520個体の遺伝データについて再解析を行った。msDNAによるSTRUCTURE解析の結果、主に太平洋岸河川に生息するアマゴ(亜種)と分布の北方に生息するサクラマス(亜種)は異なるクラスターを形成することが示された。また、サクラマス(亜種)では距離による隔離(isolation by distance)の集団構造が確認されたが、アマゴ(亜種)では認められなかった。台湾に生息するサラマオマス(亜種)では、mtDNA、msDNAともに日本に生息するサクラマスとの間に明瞭な遺伝的分化は確認されなかった。ベイジアン・スカイラインプロット解析の結果、サクラマスは約10万年前以降に分布を急速に拡大させたことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サケ科魚類各種の標本採集調査、遺伝子分析は計画に従い順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、サケ科魚類のうち主にイワナを対象として、標本の収集調査とミトコンドリアDNAおよび核DNA分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施した遺伝子実験において、これまでの助成事業等で用いた試薬や消耗品が一部使用可能となったため、消耗品等の購入を抑えることができた。次年度も引き続きサケ科魚類複数種を対象として各種遺伝子実験を実施する。したがって、遺伝子実験にかかる多くの試薬や消耗品等が必要となる。
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