研究課題/領域番号 |
16K07890
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 義明 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (80210730)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アジア農業 / 種苗供給 / 植物遺伝資源 / 知的財産権 |
研究実績の概要 |
平成28年度は次の3点を研究実施計画に掲げた。1、前年度までの研究成果を公表し、新たな研究のベースを確認すること。2、タイ・マレーシア調査を実施し、スーパーマーケットが主流となりつつある青果物流通において、生産者がF1種を採用する要因について個別経営分析を通して明らかにする。3、中国における穀類の品種開発における公的セクタと竜頭企業の役割について明らかにする。 以上の計画について、1については、吉田義明「バイオテクノロジーと知的財産」北原・安藤編『多国籍アグリビジネスと農業・食料支配』明石書店、2016年10月において、F1を中心とした商業的育種、及びバイオメジャーによるGMOを中心とした商業的育種、そして国などの機関による公的育種、さらに農民的育種の役割に分けて、アジア地域を中心とした種苗供給と植物遺伝資源利用に関する問題整理を行った。この点については、ほぼ予定通りの成果を得ることができた。2については、現地調査を2回実施して資料収集と聞き取り調査によって、在来固定種とF1種の棲み分け関係を明らかにしようとしているが、品目によって大きな違いが存在していることを知ることができた。今後は代表的な品目を設定して、種苗供給のパターンを探ることにしていく予定である。 最後に3については、2月頃の調査を予定していたが、年末よりわが国において主要農作物種子法廃止が浮上し、これに関連した研究及び意見表明を余儀なくされ、次年度に調査を延期せざるをえなくなった。アジア地域ではGMO栽培が制限されているため、主に公的セクタによる品種改良と固定種を中心に穀類の種子供給が行われており、今回の種子法廃止が与える影響は小さくないと考える。1において公刊した論文において、この領域について十分な記述がなされておらず、新たに生じた問題に十分に対処できていたいため、補足的に研究論文の発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国における穀類の品種開発における公的セクタと竜頭企業の役割について研究については、2月頃の調査を予定していたが、年末よりわが国において主要農作物種子法廃止が浮上し、これに関連した研究及び意見表明を余儀なくされたため、次年度に調査を延期せざるをえなくなった。 次に、東南アジア現地調査によって、在来固定種とF1種の棲み分け関係を明らかにしようとしていたが、品目によって大きな違いが存在していることを知ることができた。このため、今後は代表的な品目を設定して、種苗供給のパターンを探ることにしていく必要があり、再調査を実施することになった。
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今後の研究の推進方策 |
ひとまず、前年に公刊した論文に対して主要農作物種子法廃止の影響について補足した論稿を準備することから新年度の研究を開始したいと考えている。次に東南アジア調査で残された課題を再調査によって解明すること。さらに新たに飼料穀物需給を含めた、中国における種苗について、その開発・供給構造を明らかにするため、前年度から延期した中国調査を実施する。主な目的は、食肉需要が急増する中国における飼料穀物需給と密接に関連する国内作目転換とDDGS輸入についての資料収集と、穀類の品種開発についての公的セクタと竜頭企業の役割について整理を行うことである。また生産者サイドの品種についての要求項目を次の調査のために、政府の専門部局と協議して設定したい。 次いで、2年目の主要課題としていた、ハイブリッド稲開発と耐塩性品種についての予備調査を実施し、それに対する生産者サイドの評価について中国、インド両国について文献調査及び中国の開発者からの意見聴取を行い、インド調査のための準備を行うことにしたい。中国調査を延期したため2年目に予定していたインド調査については、文献調査及び予備調査にとどめ、農村調査部分は翌年度以降に実施したい。 以上、今年度は、1、公的セクタによる種子、種苗供給の社会的役割について、研究発表・論文執筆を行うこと。2、東南アジア調査を再度実施し、残された課題である品目別の種子、種苗供給の特徴を再整理すること。3、中国調査を実施し、飼料穀物需給に関連する国内作目転換と輸入の関連を明らかにすること。4、穀類品種開発における公的セクタと竜頭企業の役割分担について明らかにすること、5、ハイブリッド稲と耐塩性品種、及び工芸作物における在来種維持についてのインド調査を実施することを、今後の研究の推進方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
テーマと密接に関係する主要農作物種子法に関連した研究ついて、優先的に実施する必要があったため、予定していた中国調査を次年度以降に延期せざるをえなかった。そのため、その部分について次年度使用額が生ずることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度中に中国調査(10日間程度)を実施することによって、次年度使用額を費消する予定である。
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