前年度に引き続きタイ北部のイチゴ・花卉生産と種苗生産利用の調査を実施し、F1を中心とした商業的育種、及びバイオメジャーによるGMOを中心とした商業的育種及び国などの機関による公的育種及び農民的育種の役割に分けて、アジア地域を中心とした種苗供給と植物遺伝資源利用に関する問題整理を行った(未公刊)。またアジアにおける青果物流通革命と種苗転換の関係について研究会で発表を行った。これまでの研究を整理した結果、アジア地域ではGMO栽培が制限されているため、主に公的セクタによるF1品種と固定種を中心に穀類の種子供給が行われているが、米国におけるトウモロコシを中心とした中国への輸入拡大によるアジアにおける穀類の生産減少が見込まれ、他方中間層が増大した東南アジアにおいてはイチゴなどの園芸品目の需要が伸びていることが明らかになった。 生産者がF1種を採用する要因についての投稿論文執筆が調査実施が困難で非常に遅れており、その後の計画を組みなおさざるをえなくなった。中国の協力者及び種苗会社と研究打ち合わせを行い、もう1年間研究期間を延長して再度計画を立て直したが、予定していた中国における品種開発状況調査は疫病発生により延期せざるを得なかった。 本年は東南アジアの園芸需要について9月に海外調査を実施し、また日本との品種・品質差について、いちご研究所で意見交換を行った。他に農業経済学事典出版事業において、項目「バイオテクノロジー」に関する執筆を行った。これは2019年11月より丸善出版より上梓された。3月上旬に米国の現地調査を実施し今後の知的財産権についての制約が園芸生産に及ぼす影響について、権利移転及び自家採取等に関する制限を中心に整理した。
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