研究実績は、以下のような3つである。 第1は、「全共連と農協共済事業の収支面から見た推移と課題」として、農協共済事業を長期生命、長期建物更生、短期自動車、という3つの共済商品に分類し、分析を行ったものである。2000年からの16年度分でそれら共済商品別に収支を検証し、そして単位農協と区分した全共連(全国農業共済組合連合会)の損益を解析した結果は、学会では初めての成果であると考えられる。これは2017年の日本農業経済学会で個別報告を行った後、2018年に『農業と経済』誌に掲載することができた。 第2は、「アンケート分析による農村部での生命・損害保険(共済)の利用状況」を課題とし、この助成によって実施した農村や地方都市での家計へのアンケート調査、および生命保険文化センターによるアンケート調査の個票を用いて、分析を行った。結果として、農村部の居住や職業面での農業従事が、農協共済の利用を強く規定していることが改めて確認された。この成果は、2017年に日本保険学会でポスター報告を行い、2018年に同学会の学術誌『保険学雑誌』に投稿し、現在査読を受けて修正を行っている状況である。 第3は、「自動車および火災保険市場における農協共済の特質」という課題で、都道府県別の自動車事故率および火災発生率の推移と、農協および民間損害保険会社における共済・保険の支給/加入件数率や、支給額/掛金額比率について分析を行った。その結果は特に自動車において顕著であったが、農村地域が多い県では事故率が低く、また同じ農村県でも農協共済の支給(事故発生)率は低かったが、近年は農村県の都市化および農業従事者(農協共済利用者)の高齢化によって、その優位性が失われつつあるというものである。この成果は、2018年の日本協同組合学会において個別報告を行っており、早急に同学会誌である『協同組合研究』に投稿したいと考えている。
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