主として実証研究で、集落営農が内包する2つの組織機能(土地利用調整機能、農作業等の協同化機能)について、個々に分析的に考察することにより、集落営農から旧村営農への移行論理を明確化した。熊本県、宮崎県、福井県、岐阜県、福島県の旧村領域まで展開している営農組織の6事例の分析より集落の領域を超えた営農組織は、旧村領域でネットワーク型でのアイデンティティ形成と連動していることを実証した。従来のムラ視点から村視点への農業構造政策の展開により、競争力のある土地利用型農業経営体育成にも参考となる情報提供をしている。 そうしたネットワーク型の新たな農村コミュニティの形成には、地域組織の果たす役割が大きいことを明らかにした。特に農協組織が、旧村(あるいはJA支店、小学校区)を単位とした広域的な集落営農作りに取り組むことがより効果的であることを示した。担い手が不足する地域にあっても自治組織や農協等の協同活動により、集落営農組織が形成され、それがネットワーク型で旧村領域まで展開することで、地域農業の維持・管理体制が強化されることを明らかにした。集落営農を基礎で支える農村コミュニティのあり方を総合的に研究し、それを基礎で支える農協の協同機能の維持が、特に、担い手不足地域においては重要であることを明確にした。 これらの研究成果は、学術論文等3編、著書2冊、学会発表2編などで筆頭発表している。特に、荒井聡『米政策改革による水田農業の変貌と集落営農』(筑波書房、2017年)で、これらを体系的にまとめ発表した。それは、食農資源経済学会2017年度学術賞の受賞作品となり、学会において高く評価されている。本研究を通じて、集落営農が集落の領域を越え、旧村領域にまで展開する論理を定式化したことは、これまでの集落営農研究に新たな地平を切り拓いたものと評価できる。また、地域で数多くの講演を行い成果の普及にも務めている。
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