日本が直面する農産物市場開放の流れは今後も続き、日本の食料自給率はさらに低下することが懸念されている。こうした市場開放の流れが国産食料に対する需要を脅かすものであることに相違はないが、それ以前に、仮に国境措置が現状程度に維持されたとしても、すでに日本の食料需要は輸入品志向へ傾斜する方向に構造が変化している可能性が高い。以上の認識に基づき、①今後に予想される市場開放の進展を待たずとも、現在の日本における食料の需要構造は輸入品志向に傾斜している現状を解明し、②こうした輸入食料に対する傾斜構造の下で、今後の国産及び輸入食料の需要見通しを明らかにすること、①と②をふまえて、③開放経済体制下における国産食料需要の脆弱性を克服するための対策について、具体的に提言することが本研究の目的である。 本研究は平成30年度を最終年度とする3年間の研究であるが、初年度は研究枠組みの検討と分析手法の開発を行った。その結果、「世代と世帯の2つの二極化が、日本の食料需要構造を輸入品志向に傾斜させている」という仮説を設けた。 2年目の平成29年度は、前年度に設けた仮説を実証するための分析を行った。その結果、「世代と世帯による2つの二極化」は構造的な事象であり、日本の食料需要構造を輸入品志向に傾斜させている主要因であることが明らかになった。 最終年度の平成30年度は、はじめに、「世代と世帯による2つの二極化」が食料需要の輸入品志向に結びつくメカニズムについて、詳細な確認作業を行った。その上で、国産食料需要の脆弱性を克服するための対策として複数の方策が考えられる中で、外食を含む食品産業への食材供給を目指すことが、開放経済体制下ではもっとも重要であることを指摘した。
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