研究実績の概要 |
わが国の畜産経営において、口蹄疫などの家畜感染症から復興し長期的な事業拡大が求められるなか、主に畜産経営の成長に農業・農村金融がどのような役割を果たすべきか、学術的見地から考察することが本研究の目的である。大家畜経営と中小家畜経営のそれぞれにおいて、現地実態調査を踏まえ具体的な分析を行った 大家畜経営に関しては、口蹄疫から復興過程の宮崎県川南町を中心に検討してきたが、今年は特に家畜防疫に対する意識や費用や発展過程での経営対応等がなされているか、検証を行った。方法は、肉用牛農家に対してアンケート調査並びに聴き取り調査を行った。そして、家畜防疫、経営管理、飼料確保、資金管理等の各側面について明らかにするとともに、今後、地域全体の取り組みとして必要な課題を整理した。 中小家畜経営に関しては、養豚に焦点をあて、2010年の口蹄疫発生以前に成長や安定性を実現していた家族経営や法人経営を分析対象とし、2013年以降,交易条件が改善している中で,次の3点を明らかにした。第1に、グループ内の繁殖めす豚生産農場や肉豚生産農場が離農することで、雑種生産システムの大きな変化が生じ、また、グループ全体の出荷頭数が18,000頭から10,000頭へ減少しているため、契約出荷のメリットも減少することとなった。第2に,経営を再開した養豚経営間には技術水準にバラつきが存在し,加えて、第1の点で明らかになった雑種生産システムのための繁殖めす豚の供給が3回切り替わったことで種付け頭数・受胎率、肉豚出荷頭数に大きなバラツキを発生させることとなり,技術水準の不安定性が発現することとなった。ただし,第3に、これらの養豚経営では,技術水準の不安定性が確認されるものの,2013年以降の豚肉価格の高位水準で推移や口蹄疫後の特例措置(税金免除など)の実施により高い収益性・財務状況を実現しており,高い自己資本率を確認された。
|