研究課題/領域番号 |
16K07905
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
椿 真一 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (20404204)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 農地市場 / 農地中間管理機構 / 農地中間管理事業 / 農地流動化 / 取引費用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,担い手経営体への農地集積を進めることが主要な政策目標となる中で,公的機関による農地利用調整が農地流動化に与える効果,影響を明らかにし,農地流動化の促進条件を解明することである.そのためには,農地中間管理機構の設置による農地貸借市場圏の拡大と,それによる農地市場の活性化を分析し,農地中間管理機構による農地利用調整において,取引費用の態様と変化(どの取引費用を誰が負担しているのか,取引費用で軽減されたものは何か)を明らかにし,農地流動化促進のための諸条件を実態調査から明らかにすることを具体的課題としている. 研究初年度は,公的機関である農地中間管理機構による農地流動化がすすんでいる地域を選定するため,農地流動化に関する統計整理や資料収集,先行研究の整理を行い,農地中間管理機構の実態調査を行った. 農地流動化に関する先行研究の整理を行い,統計整理では2015年農林業センサスを中心に現段階での農地流動化の到達点を明らかにした.実態調査では,農地中間管理機構による農地流動化実績が高い山形県および広島県において,県レベルでの農地中間管理事業の取り組みを聞き取り調査した.そこから,農地中間管理機構のもとで農地市場圏の拡大状況を確認し,取引費用の低減効果を検証して,農地中間管理機構による転貸面積が増えている要因を明らかにした. 以上の研究成果は,「農地市場における農地中間管理事業の効果と課題-山形県を事例に-」と題して,東北農業経済学会に論文投稿中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究初年度は,農地流動化に関する統計整理や資料収集,および都道府県段階の実態調査を行う計画であった. 統計整理や資料収集については順調に行うことができた.しかし,実態調査では,農地中間管理機構の実績が高い北海道と岩手,山形,富山の農地中間管理機構都道府県機構への聞き取り調査から農地市場圏の拡大状況を明らかにする計画であったが,実施できたのは山形県と広島県の2つにとどまった.広島県の調査は2年目に実施する予定を前倒しした. 以上のように,研究の進捗が計画よりも遅れている理由は,研究代表者が研究初年度である平成28年の10月に,秋田県立大学から愛媛大学へ所属機関の異動があり,年度途中の異動であったため,引き継ぎや新たな研究体制の構築に時間を要したため,調査期間の確保が困難だったからである.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,農地貸借市場圏の拡大がより顕著な都道府県を絞り込み,その農地中間管理機構の業務委託先の中で,機構による農地流動化の取り組みが進んでいる市町村を選定して取引費用の削減状況の実態調査を実施する.29年度に計画している調査に加えて,28年に実施することができなかった調査も行う. 調査内容はそれぞれの農地中間管理機構の組織・事業実施体制と,農地所有者からの農地借受け,農地の受け手の応募状況,機構から担い手への農地貸付実績に関するデータ収集を行い,農地貸借市場圏の拡大状況を確認する. また,農地中間管理機構を介した農地貸借が進んでいる市町村,具体的には経営耕地面積に占める農地中間管理機構による農地流動化率が高い市町村を確認し,業務委託体制や内容についての概要を調査する. さらに、農地流動化が進展し大規模穀作農場が展開している北米地域において、農地流動化の先進的取り組みを調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の計画では、農地中間管理事業の実績が高い北海道と岩手,山形,富山の農地中間管理機構の調査を行う予定であったが、この中で調査できたのは山形県のみであった。 その理由は、研究代表者が平成28年10月に、秋田県立大学から愛媛大学に異動になり、新たな研究機関で教育・研究の基盤を構築する必要がでたためである。調査日数を確保することが困難となり、遠方の調査が難しくなった。それにより、計画を予定通り実施することができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に計画している調査に加え、平成28年度に調査ができなかった北海道と岩手,富山を29年度に追加実施することとし、次年度使用額はその調査旅費にあてることとする。
|