本研究の目的は,担い手経営体への農地集積を進めることが主要な政策目標となる中で,公的機関による農地利用調整が農地流動化に与える効果,影響を明らかにし,農地流動化の促進条件を解明することである. 30年度は農地中間管理事業の実施開始から5年目であり、まず農地中間管理事業の総括的データ分析を行った。そこでは農地中間管理事業が伸び悩み、全体的には農地流動化が国の計画ほど進展していないことを確認した。また、農地中間管理機構による農地流動化が顕著な水田農業を中心とした東北地域、および遅れている樹園地農業地域において,県段階の農地中間管理機構の事業内容や実績を確認した.農地中間管理機構は相談窓口業務,出し手・受け手との条件交渉やマッチングなど農地の集約化・連坦化に関わる業務を市町村等に委託しており、機構業務委託先である市町村段階の取り組みと実績についても確認し,現地において取引費用の中身や変化を調査した.農地中間管理事業においては、水田、樹園地といった地目の相違にかかわらず農地の市場圏は拡大していないこと,取引費用の低減については水田では限定的で、樹園地では皆無であることを明らかにした。農地中間管理事業による農地流動化の促進のためには、農地流動化の成否が機構業務委託先に依存していることから,業務委託先の負担を十分に措置する必要があること、受け手が見つかるまで農地や園地を一時的に管理する仕組みや,受け手の確保などが重要であり,これらを農地中間管理事業やその関連対策が補完できるような制度対応が求められることを指摘した。また、米国では州政府による保全地益権制度が農地流動化や農地保全に効果があることも参考調査から明らかとなり、この政策を参考に今後の日本の農地流動化政策を構築していくことが重要であることも指摘した。 なお、研究成果は東北農業経済学会で発表するとともに、同学会誌に掲載されている。
|