研究課題/領域番号 |
16K07907
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
阿久根 優子 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (90363952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気候変動 / 高温耐性品種米 / 地域経済 / 応用一般均衡分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、気候変動適応策としての高温耐性品種米による地域経済への影響を動学的応用一般均衡(DCGE)モデルを用いて評価することである。 平成28年度は分析に必要なデータ収集とデータベース作成を行った。主な内容は、(1)全国DCGEモデルで使用する社会会計表の基準年の変更、(2)稲作の研究開発関連のデータベース作成、(3)地域間産業連関表の作成の3点である。 まず、(1)全国DCGEモデルの既存の社会会計表の基準年の変更では、Akune et al.(2015)で用いた社会会計表の基準年を「産業連関表」と関連データを用いて2011年に変更した。次に、(2)稲作の研究開発関連のデータベース作成では、農業関連の研究開発データを農林水産省「農林水産関係試験研究要覧」、品種別作付面積を農林水産省「米穀の品種別作付状況」と(公社)米穀機構の公表データ等を収集しデータベースを作成した。さらに、(3)地域間産業連関表の作成では、経済産業省「平成17年地域産業連関表」の9地域の基本分類のデータを用いて、農業と食品製造業を中心とした地域間産業連関表を作成した。 これらのデータベースは平成29年度以降のモデル推定や評価分析に用いる。具体的には、全国や各地域を対象に研究開発と新品種普及モデルの推定に(2)のデータベースを使用する。これらのうち全国モデルの結果を(1)の社会会計表を用いたDCGEモデルに導入し、稲作での新品種開発を含めた研究開発の経済効果を評価する予定である。(3)の農業と食品製造業を中心とした地域間産業連関表は、特定の地域の異常気象による農業被害の地域間の影響といった国内の地域間のフードシステムの脆弱性を評価するのに用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開発と新品種普及モデルの推定が、必要なデータベース作成に想定以上の時間を要したため遅れている。これは、当初、稲作の品種別作付面積のデータ収集で使用を予定していた電子データベースが利用不可になり、紙媒体も含めて収集しなおし、データベース作成を行ったためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降の研究予定は次のとおりである。まず、研究開発と新品種普及モデルについて全国や各地域を対象に推定を行う。これらのうち全国モデルの結果をDCGEモデルに導入し、稲作での新品種開発を含めた研究開発の経済効果を定量化する予定である。また、特定の地域の異常気象による農業被害の地域間での影響といった現在の国内の地域間のフードシステムの脆弱性を評価する予定である。 当初の研究計画との変更点は、現地調査の時期と研究結果の公表の追加である。研究開発と新品種普及モデルの推定のために現地調査を行う予定であったが、データベース作成に予定以上の時間がかかったためモデル推定に遅れが生じている。これに伴い現地調査時期を変更する。また、当初の研究内容に追加した地域間のフードシステムの脆弱性の評価分析の成果の公表を追加する。これらに必要な経費の使用変更申請を平成28年度に行った。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは次の2つの理由による。1つは、研究開発と新品種普及モデルの推定のために現地調査を行う予定であったが、稲作の研究開発関連のデータベース作成に想定以上の時間を要し、モデル推定に遅れが生じ平成28年度に予定していた現地調査時期を変更したことによる。 もう1つは、当初の研究内容に予定していなかった、地域間のフードシステムの脆弱性の評価分析と農業関連の個票データを用いた生産性分析の2つの研究を研究全体の遂行上その重要性から追加したため、それらの準備や研究成果の公表に必要な経費を確保するためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の使用計画は次のとおりである。まず、地域間のフードシステムの脆弱性の評価分析の評価分析の成果報告を行う予定である。次に、農業の生産性計測に必要な個票データの申請手続きをする際に用いる予定である。 さらに、研究開発と新品種普及モデルの予備推定を平成29年度に行う予定であるため、その結果を踏まえ平成30年度に現地調査を行う予定である。
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