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2017 年度 実施状況報告書

アフリカにおける土地制度改革の社会制度・システムに与える影響に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K07920
研究機関東京大学

研究代表者

松田 浩敬  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (50451901)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードルワンダ / サブ・サハラアフリカ / 貧困緩和 / 土地政策 / 避妊 / 家計内資源配分
研究実績の概要

本年度は、昨年度に引き続いた土地利用データ、関連する政策文書、農業生産に関するデータの収集と分析を行った。コミュニティレベルの紛争調停の裁判制度である「アブンジ」の記録については、引き続き現地機関との交渉を中心に取得を試みている。また、昨年度、本研究遂行の過程で明らかになった、ルワンダ政府が推進する避妊政策による、避妊注射やインプラント等のホルモン由来の避妊法の副作用による母親の農業や家事への労働投入の困難さについて、より詳細な調査・分析を行った。ホルモン由来の避妊法による副作用が、一定割合で使用者に生じており、その結果、母親の労働配分に影響することとなる。その結果、父親の労働配分も変化せざるを得ない。これに対して家計は対応の方法によって以下のように分類される。すなわち、1)母親の労働時間の減少に対応しない、2)父親が母親の労働時間の減少を補う、3)賃金労働者等を雇用し母親の労働時間の減少を代替する、である。一般的な対応としては、1)、2)である。3)に関しては、当然のことながら家計の裕福度による。当然のことながら家計全体の資源量は、その家計の子供の栄養状態に影響する。調査対象地を含むルワンダ農村部では、ほとんどの家計が農業に依存した自給自足的な生計を営んでいる。1)、2)、特に1)の場合、農業生産量の減少を生じさせる。またこの場合、母親の労働時間の減少が原因であることから、父親の場合に比して子供への資源配分への影響、あるいは子供の栄養状態への影響は大きなものとなる。さらに、1)、2)では、父親が母親の副作用の状況に理解を示さず、怠惰である、あるいは副作用があっても農作業に参加すべき、といった考えを抱くことがある。これは、結果として避妊そのものをやめることにつながり、望まない妊娠による家計規模の増大に直面することとなる。つまり家族一人あたりの資源配分量が減少することとなる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度は、本研究の調査対象であるルワンダ共和国・東部州。カヨンザ県のルカラセクターおよびムイリセクターを対象に昨年度に取得した、土地利用データ、関連する政策文書、農業生産に関するデータの収集と分析を行うとともに、先述のように、ホルモン由来の避妊法の副作用が母親の農業生産や家事への労働投入に影響することを通じて、父親の労働投入・配分、家計全体の資源量、家計の資源配分、が変化することについて明らかにした。これらについては、国内外の学会等で発表するとともに、現在、国際誌への投稿準備中である。土地保有については、特にルカラセクターは、当該地域の高い合計特殊出生率、ルワンダ国内の他地域からの移民、周辺国へ流出したルワンダ難民の帰還、により人口稠密となっており、新たな土地の外延的拡大が難しい状況にある。これに伴い、1家計あたりの保有農地が縮小している。しかし一方で、土地保有の二極化が進展しており、小規模農家と大規模農家の格差が出現しつつあることも明らかとなった。昨年度、所在を確認したアブンジの県レベルでの集計データについては、引き続き取得をめざし、現地機関に依頼を行っているとことである。公的データの取得に際して、時間が必要であるが、それを補う他の公表データおよび家計調査によるデータの利用により、本研究の目的は順調に達成されている。さらに、それらに加え昨年度、現地調査から明らかとなった、限られた土地資源の下での母親の労働投入の変化が家計の資源配分および家計内資源配分に与える影響について詳細な分析を行うなど、新たな発見も見られる。

今後の研究の推進方策

次年度は、本研究の最終年度にあたることから、これまでの研究成果のとりまとめを行う。特に、ルワンダの農業や土地政策、さらに人口政策と当該コミュニティの社会制度・システム、家計の厚生の関係について分析を行う。それに基づき、貧困緩和に資する効果的な制度設計・戦略等に関する考察していく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Dynamics of bargaining power for contraceptive use and Intra-household resource allocation in the rural household of Sub-Sahara Africa: A case study in rural area of Rwanda.2017

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, H., Shimamura, Y., Sekiyama, M., Mohan, G. and Aoun, N.
    • 学会等名
      IUSSP International Population Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Impact of Intra-household Resource Allocation on Bargaining Power for Contraceptive Use in the Rural Household of Sub-Saharan Africa: A Case Study in Rural Area of Rwanda.2017

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, H., Shimamura, Y., Sekiyama, M., Mohan, G. and Aoun, N.
    • 学会等名
      Agricultural and Applied Economics Association (AAEA)
    • 国際学会
  • [学会発表] 開発途上国における農村家計の避妊行動が資源配分に及ぼす影響:ルワンダ共和国東部州を事例として2017

    • 著者名/発表者名
      島村由香・松田浩敬・関山牧子・アバホ=シオジニ・ アオン=ナエル・モハン=ギータ・松岡拓也・佐々木貴代
    • 学会等名
      日本人口学会
  • [学会発表] サブサハラ・アフリカ農村部における家族計画サービス普及に伴う課題:ルワンダ東 部を事例として2017

    • 著者名/発表者名
      島村由香・松田浩敬・関山牧子・アバホ=シオジニ・ アオン=ナエル・モハン=ギータ・松岡拓也・佐々木貴代
    • 学会等名
      日本熱帯医学会大会・日本国際保健医療学会学術大会・日本渡航医学会学術集会合同大会

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公開日: 2018-12-17  

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