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2017 年度 実施状況報告書

オランダ農業モデルの批判的検証とオルタナティブ・モデルの可能性

研究課題

研究課題/領域番号 16K07922
研究機関京都大学

研究代表者

久野 秀二  京都大学, 経済学研究科, 教授 (10271628)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードオランダ農業 / フードバレー / 農業競争力 / オルタナティブ農業 / ワーヘニンゲン大学 / ケアファーミング / イタリア農業
研究実績の概要

本研究は、選択と集中による効率的経営と規模拡大を通じた輸出志向型の農業工業化および産官学連携による関連産業・支援産業のクラスター化で特徴づけられるオランダ農業の実態を明らかにすることで、同モデルを日本に適用しようとする近年の政策言説を批判的に検証するとともに、同国で実際に展開される多様なオルタナティブ農業の可能性を明らかにすることで、オランダ農業モデルの重層性を示し、結果的に日本農業の将来方向性と政策論に示唆を与えることを目的としている。
平成29年度は、前年度に実施した文献調査ならびに現地予備調査を踏まえ、6月と9月にオランダの伝統的果樹地帯と大規模施設園芸地帯のクラスター事業、ならびに同国で広がりを見せている福祉農業(ケアファーミング)の諸事例を現地研究協力者(Dr Joost Jongerden、ワーヘニンゲン大学)とともに調査するとともに、オランダにおけるオルタナティブ農業モデルを相対化するために、零細性や協同性など、むしろ日本との共通性を多分に持つイタリア・ローマ近郊のオルタナティブ農業や生消提携の取り組みについて、現地研究協力者(Prof Maria Fonte、ナポリ大学/アメリカン大学ローマ校)とともに調査を行った。
文献調査および現地調査を踏まえたコンセプト・ペーパーの執筆には至らなかったが、本研究の一環として、国際比較の視点から日本農業の現段階と担い手の特徴を析出することを目的に、ワーヘニンゲン大学の研究者(Prof Paul Hebinck)が中心となって編集した国際学術誌(Journal of Rural Studies、当該分野のトップジャーナルの一つ)の特別号に寄稿し、掲載されることになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

9月のオランダ渡航では当初、ワーヘニンゲン大学の専門家育成プログラムとして計画されていた、オランダ農業モデルの日本農業への適用可能性に関する集中コースにオブザーバー参加し、日蘭両国から参加する利害関係者との意見交換を含めた参与観察を行う予定だったが、諸事情により次年度以降に延期となった。そのため、参与観察を含めた言説分析を行い、その成果をコンセプト・ペーパーにまとめるという当初の計画が達成できなかった。同集中コースのコーディネーター研究者(Prof Jos Verstegen)とは引き続き情報交換を進める予定である。他方、当初は予定していなかった、イタリアにおけるオルタナティブ農業モデルの現地調査を実施する機会があり、オランダのオルタナティブ農業モデルを相対化する視点を得ることができた。また、日本農業の現状を国際比較の視点から理論的・実証的に把握するための論文執筆の機会を得ることができた。これは、いずれのオランダ農業モデルであれ、その適用可能性を検証する上で欠かせない作業であり、それゆえ、本研究の一部と位置付けることにした。とはいえ、そのための作業に時間を要したことも、上記コンセプト・ペーパーの執筆と発表に十分な時間を割くことができなかった要因の一つとなった。

今後の研究の推進方策

これまで実施した先行研究調査、現地予備調査、委託調査、第一回目の現地本調査を踏まえ、日蘭両国のオランダ農業モデルに関する言説分析ならびに事例分析を行う。その成果をまずは日本語の紀要論文として執筆するとともに、政策的含意という点で必要性の高い国内研究集会等での成果発表を優先する。
当初候補としていた国際社会学会世界大会(トロント、2018年7月)では別の研究課題でセッションをオーガナイズすることになったため、そこでの成果発表は断念し、情報収集と関連分野の研究者との意見交換の場と位置付けるが、研究期間終了後の2019年度もしくは2020年度を視野に入れて、Interpretive Policy AnalysisかRural Sociologyなど、本研究に関連する専門領域の国際学会・国際学術誌で発表するための準備を進める。
なお、平成29年度に計画されながらも次年度以降に延期となったワーヘニンゲン大学での集中コースのコーディネーター研究者(Prof Jos Verstegen)が、研究協力者のJoost Jongerdenと一緒に5月に来日して合同ワークショップを開催することになっているため、その機会を利用して情報共有と意見交換を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

前年度から繰り越した予算が約50万円あった。その上で、6月のオランダ渡航はワーヘニンゲン大学との国際連携教育プログラムの一環だったため別予算から支出し、その分で同時期に開催された国際公共政策学会に大学院生とポスドク研究員を派遣し、政策分析手法に関する研究発表と情報収集に当たらせた。また、図書を中心とする物品費と資料の収集と整理を目的とする人件費については当初計画を上回った。次年度使用額が10万円弱発生したのは、これらの当初計画からのズレと費目間の調整の結果として生じた誤差と認識している。次年度では情報収集と意見交換を目的とする国際学会への参加および資料の整理を目的とする人件費にまとまった額の支出を予定しており、その補充に充当する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件)

  • [国際共同研究] Wageningen University(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      Wageningen University
  • [国際共同研究] American University of Rome(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      American University of Rome
  • [雑誌論文] Revitalising Rurality under the Neoliberal Transformation of Agriculture: Experiences of Re-agrarianisation in Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Shuji Hisano, Motoki Akitsu and Steven McGreevy
    • 雑誌名

      Journal of Rural Studies

      巻: in press ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.jrurstud.2018.01.013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The First Food Regime in Asian Context? Japan’s Capitalist Development and the Making of Soybean as a Global Commodity in the 1890s-1930s2017

    • 著者名/発表者名
      Midori Hiraga and Shuji Hisano
    • 雑誌名

      AGST Working Paper Series

      巻: 2017-03 ページ: 1-33

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 主要農作物種子法廃止の経緯と問題点:公的種子事業の役割を改めて考える2017

    • 著者名/発表者名
      久野秀二
    • 雑誌名

      京都大学大学院経済学研究科ディスカッションペーパーシリーズ

      巻: J-17-001 ページ: 1-29

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 主要農作物種子法廃止で露呈したアベノミクス農政の本質2017

    • 著者名/発表者名
      久野秀二
    • 雑誌名

      農村と都市をむすぶ

      巻: 788 ページ: 42-50

  • [雑誌論文] 誰のための主要農作物種子法廃止なのか:価格引下げは実現するか2017

    • 著者名/発表者名
      久野秀二
    • 雑誌名

      農業と経済

      巻: 83(10) ページ: 121-135

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公開日: 2018-12-17  

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