研究課題/領域番号 |
16K07924
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 淳史 京都大学, 農学研究科, 准教授 (00402826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | PL480 / アメリカ小麦戦略 / 農業開発 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続きアメリカ国立公文書館で収集したアメリカ農務省海外農業局(FAS)資料および、外務省外交史料館で収集した外交文書の分析を行ったほか、広く関連文献の収集・分析を行った。これまでの資料分析により、申請者は対日PL480について従来唱えられてきた、アメリカの官民一体となった小麦市場開拓により戦後日本の食生活が西洋化したという「アメリカ小麦戦略」論は小麦生産者団体の活動に関する過大評価であることを見出した。先行研究の検討の結果、こうした主張が長らく受け入れられてきた要因(先行研究の問題点)として、①小麦の種類と用途の違いが留意されてこなかったこと、②対日PL480の品目として小麦にのみ関心が集中し他の品目(特にコメ)に関する考察を欠くこと、③1950年代における国際政治状況に留意せず日米関係のみで論じられてきたこと、の3点が明らかとなった。②③に関しては、とりわけ東南アジア諸国とのコメ貿易が日本にとって(あるいはアメリカにとっても)経済的・政治的に重視されており、対日PL480の展開に大きな影響をもたらしたことが明らかとなった。以上の研究成果については、日本農業経済学会(2018年5月・北海道大学)およびThe 15th International Conference of the East-Asian Agricultural History(2018年9月・ソウル大学校)で報告を行い、現在研究論文を学術誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日米両国政府文書の資料収集についてはおおむね当初計画の見込み通り進展し、収集済みの資料については整理も近く完了する予定である。次年度は、査読結果をふまえて投稿論文の修正を行い、研究成果の発信を積極的に行ってゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、日本の外交文書については積極的に開示請求と閲覧を進めてゆく。また、対日PL480について現地通貨売却分に着目した分析を行ってきたが、学校給食に用いられた贈与分に関しても資料分析を進め、学会報告を行うこととしたい。なお、贈与分の分析に際して必要が生じた場合には、アメリカ国立公文書館での補充調査実施も検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は研究課題に関連する外交史料公開が少なかったため、外交史料館への出張旅費および資料整理謝金の使用額が予定を下回った。次年度使用額については国内における資料収集に用いる予定であるが、研究の進捗状況によってはアメリカ国立公文書館への補充調査への充当も検討したいと考えている。
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