研究課題/領域番号 |
16K07926
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
赤沢 克洋 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (70304037)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 地域資源 / 経験価値 / マーケティング / 定量分析 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,地域マーケティングにおける心理的・感覚的戦略要素に着目し,その活用による地域マーケティングの新たな戦略方途を提示することである.このために当該年度に行った取り組みは以下である. 世界遺産における観光誘客には,遺産資源や観光化資源の魅力づくりといった誘引要因の創出だけでなく,遺産資源と観光化資源による発動要因の充足にも目を向ける必要がある.こうした発動要因は心理的・感覚的戦略要素の一種とみなされる.また,産業遺産を核とした世界遺産は,誘引要因としての遺産資源の観光誘客力,誘引要因を創出する観光化資源のあり方,遺産資源による発動要因の充足の程度や態様に関する検討が他の世界遺産と比べてより必要となるため検討題材として注目に値する.そこで産業遺産を核とした世界遺産である石見銀山を分析対象として,遺産資源ならびに観光化資源が発動要因の充足への期待ならびに満足をもたらす効果とその効果が顕在化した成果を定量的に検証した.その結果を大枠でまとめれば、第1に,遺産資源は発動要因の充足への期待と満足をもたらす効果が限定的であること,第2に,遺産資源が充足できない発動要因を充足する補完的な役割を自然や散策などの観光化資源が担っていること,第3に,期待や満足をもたらす効果の多くが成果として顕在化しているが,遺産資源が発動要因の充足への期待をもたらす効果をはじめとしたいくつかのケースにおいて顕在化が十分でないことがわかった.さらに,以上の知見に基づいた石見銀山における世界遺産観光資源の活用方策の検討を通して,産業遺産を核とした世界遺産における観光誘客に向けたマネジメント戦略を提示した.その結果として,第1に,産業遺産に関わる観光化資源の充実,第2に,自然,食事,お土産を訴求点とした魅力づくりの強化,第3に,散策を前提とした周遊空間の充実が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の目的である,サービス財を対象とした心理的・感覚的戦略要素の経験価値としての体系化の試行を行うことができた.ただし,当初計画していた日帰り温泉や美術館を対象とすることができず,前年度と似た観光資源を対象とするに留まっている.また,当初予定していた経験価値プロバイダーの抽出は進んでいない.これらのことから,やや遅れていると達成度を評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,前年度までと異なる観光資源や地域資源等を選定して,管理者への聞き取り調査と利用者調査を行い,心理的・感覚的戦略要素の体系化と経験の価値形成に関する前年度までの知見の補強を行うとともに,主に,経験価値プロバイダーの抽出とその有効性の検証を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初予定していた,人件費,謝金に関して,今年度は雇用する必要性がなかったため. (使用計画) 今年度は,人件費については他の資金により充当できるため,今年度もまた人件費の支出は少なくなる見込みである.その分と繰り越し分を合わせて,被雇用者に関わる物品費と調査旅費に支出する予定である.
|