本研究課題の目的は,地域マーケティングにおける心理的・感覚的戦略要素に着目し,その活用による地域マーケティングの新たな戦略方途を提示することである.このために当該年度に行った取り組みは以下である. 第1に,旅行体験に基づく地域感情に関して,因果構造モデルの推定と検証を行った.その結果,①地域愛着は,地域ロイヤルティを形成し,さらにこの影響を介して利他行動意向に結びつくこと,②地域ロイヤルティのうちマニア意識は,利他行動意向に強く結びつき,また地域愛着と利他行動意向を結びつける働きをもつこと,③地域愛着と地域ロイヤルティは,総合価値,観光資源価値のうち主資源価値とサービス価値,旅行感情を形成要因とすることが示された. 第2に,玉造温泉を分析対象に設定し,日帰り旅行者の温泉地への期待についてBWSを用いて定量的な分析を行った.その結果,①日帰り旅行者にとって温泉地への期待として最も重要度が高いのは温泉であること,②温泉街散策や観光名所についても温泉地への期待として重要であること,③旅行愛好,写真愛好の選好,同行者,五感への期待をもつ旅行者ほど温泉地へのさまざまな期待の重要度が相対的に高いこと,④旅行者のいくつかの属性・選好・旅行の発動要因と温泉地への期待の重要度には理論整合的な関係が確認できることが示された. 第3に,コナンのまちづくりを分析対象に設定し,コンテンツツーリズムの取り組みの重要度についてBWSを用いて定量的な分析を行った.その結果,①作品の世界を味わえるような取り組みが旅行者にとって最も重要であること,②コナン通りに見どころをつくる取り組み,撮影スポットを充実させる取り組み,家族で遊べる施設や場所を充実させる取り組み,コナンに関するグッズを充実させる取り組みが重要であること,③旅行者のいくつかの属性や選好と取り組みの重要度には理論整合的な関係が確認できることが示された.
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