研究課題/領域番号 |
16K07930
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
澤田 守 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, グループ長 (60355469)
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研究分担者 |
松本 浩一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, グループ長 (10355472)
原 珠里 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (30355466)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 新規就農 / 新規参入 / ビジネスモデル |
研究実績の概要 |
今年度は新規参入経営の実態調査などをもとに、新規参入における参入初期の経営展開について分析を行った。前年度に策定したフレームワークをもとに、複数の新規参入者の実態調査を行い、経営確立がどのように行われているのかについて把握した。 作目、品種の選択などの「事業機会」に関してみると、作目の選択が独立後の経営展開に大きく影響している。特に新規参入の場合は、参入時の自己資金が限られているため、経営初期に作目転換を図ろうとしても、作目転換が困難になるケースが多い。そのため、最初の作目選択が初期の経営展開に対して重要な影響を及ぼしている。次に、農産物の生産、販売を含めた「供給システム」の視点から、新規参入者の経営展開について考察した。新規参入者の多くは農業技術が確立しておらず、安定的な生産が困難な状況にある。そのため、販路の確保とともに、安定した収量を確保できる技術を有するかが重要なポイントとなる。また、「供給システム」の確立に関しては、「経営資源」の確保と密接な関係があり、特に新規参入者の場合は、優良農地と農業労働力の確保が重要な要因となっている。信用基盤のない新規参入者においては、参入当初は優良農地の確保が難しく、初期は出てくる農地を借りうけ、地域での信頼を得ながら、徐々に条件の良い農地を確保している実態が示された。優良農地の確保に関しては、地域社会との信頼形成が重要であり、地域の行事などに積極的に参加し、ネットワークの構築を図ることが必要になっている。また、「経営資源」については、優良農地とともに、特に農繁期の農業労働力の確保が重要となる。新規参入者の場合は、夫婦、もしくは単身での参入が多いため、農繁期の労働力が不足しやすく、雇用労働力の確保対策が重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規参入における参入初期の経営展開について実態調査を行い、経営確立に至る展開を把握するとともに、定着条件について考察した。昨年度のフレームワークを用いながら、多面的な視点で新規参入者の経営確立した要因を考察しており、新規参入者の定着条件について知見を得ることができた。一部の調査が予定どおり実施できていないが、全体への影響は軽微であり、現在までの研究の進捗状況は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
経営を確立している新規参入事例を調査することで、新規参入者が初期の経営展開に必要な要因について総合的に考察した。本年度に関しては、新規参入者に対する調査を進めるとともに、経営確立に至った要因について経営状態、地域社会の定着の視点から分析し、評価システムの構築を図る。特に、新規参入に関しては、法人研修、就職後に独立するケースも多く、法人のサポートを受けながら経営として確立している事例もみられる。法人を経由して就農した事例も踏まえながら、新規就農の経営展開に関する分析を進め、評価システムに反映させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新規参入者の調査に関して、調査先の都合などがあり、当初の計画に沿った調査が実施できなかったことなどから、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 次年度使用額303,391円は、新規参入者に関する経営データの入力などに関する賃金、及び、新規参入者の経営データ収集、学会報告に関する出張旅費等、次年度に申請する金額と併せて、研究計画遂行のために使用する。
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