農業への新規参入の場合、参入初期に如何に経営を展開し、短期間で専業経営として確立するかが重要になる。そのため、分析のフレームワークとして、一般経営学における起業経営の枠組みを用いながら、経営の「事業機会」、農産物の「供給システム」、さらには農地や施設などの「経営資源」がどのように変化しているのかについて、経営を確立した新規参入者の経営展開をもとに分析・考察した。考察の結果、経営を確立した新規参入者の場合、「経営資源」の拡大に対応して、労働力の確保などを含めた「供給システム」を構築しており、「経営資源」の拡大とともに、農業技術の向上、労働力の確保といった「供給システム」の確立がポイントになることが明らかになった。 さらに、新規参入者が経営を確立するためには、経営面での対応とともに、地域社会への定着が重要となる。その対応策として、新規参入者の受入を図り、確立への支援を行っている民間の支援機関、及び里親制度をつくり、新規参入者の支援対策を行っている市町村、公的機関を調査した。 これらの結果からは、新規参入者にとって「経営資源」の拡大と「供給システム」の確立、地域社会への適応が重要になることが示された。さらに民間の支援機関を通じた新規参入では「事業機会」、「供給システム」に関する習得が可能である場合が多いこと、公的機関の場合は地域社会との仲介において優位性があり、新規参入者の経営確立にとっては相互の支援体制の構築が重要であることが示された。
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