研究課題/領域番号 |
16K07934
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
武藤 由子 岩手大学, 農学部, 准教授 (30422512)
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研究分担者 |
渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10335151)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 窒素動態 / 水移動 / 蒸発 / 土壌微生物 / ATP量 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,一次元カラム実験を行い水移動が土壌中のアンモニア態・硝酸態・ATP濃度の分布に与える影響を明らかにすること,及び実験結果を微生物活動を考慮した一次元土中水分溶質移動モデルで再現することである. 平成28年度は,岩手大学での室内実験において,蒸発にともなう水移動が土壌中の窒素動態に与える影響を調べるための一次元カラム蒸発実験を行った.供試土壌には岩手大学圃場の休耕畑から採取した表層土を用いた.これに硫酸アンモニウムを添加してカラムに詰め,水分量を飽和程度に調整して上端から蒸発させた.蒸発速度は,試料の上端付近に設置したファンの位置によって制御し,カラム全体の質量変化から把握した.実験開始後,0・5・10・20・30日の段階におけるカラム内の土壌水分量・NH4+-H・NO3--N・ATP濃度の分布を測定した.また,数値解析に必要となる供試土壌の水移動特性を表現するパラメータを得るための実験,さらに硝化の反応速度定数を得るためのバッチ試験も行った.三重大学では,数値解析に必要な,窒素の吸着特性に関するパラメータを得るための浸潤実験を行った.実験で得られた水移動特性等のパラメータを用いて,一次元土中水分溶質移動モデルHydrus1Dにより,硝化の反応速度定数を一定値として与えた場合の土中の水移動と窒素移動を計算し蒸発実験の結果と比較した.その結果,より現象に即した計算を可能とするためには,水移動に伴う硝化の反応速度定数の変化を考慮する必要があることが明らかとなった.現在は,分担者と討議を進めながら,硝化の反応速度定数を水分量や水分移動速度の関数として与えるよう改良を行っているところである.現場観測については,岩手大学の休耕畑に試験区を設置し,土壌水分量・電気伝導率・地温・気象条件(降雨量・風向風速・日射量・気温・湿度)を観測した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の概要に記載の通り,計画した実験・現場観測を全て行い目的を達成することができた.ただし,数値解析については現在も改良を進めているところであるため「概ね順調に進展」との評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
初年度においては,計画した研究内容の遂行が概ね可能であった.そこで,研究期間の2年目となる平成29年度においても,当初の計画に沿って研究を進める予定である.室内実験では,浸潤にともなう水移動が土壌中の窒素動態に与える影響を調べることを目的とした,異なる浸潤速度の一次元カラム浸潤実験を行う.蒸発実験と同一の供試土壌を用い,試料の上端から定量ポンプで硫酸アンモニウム溶液を一定フラックスで供給する.浸潤速度は,定量ポンプによる上端のフラックスと下端の負圧条件を調整することで制御する.実験開始後,土壌水分量・NH4+-H・NO3--N・ATP濃度の分布の変化を調べる.三重大学では引き続き,窒素の吸着特性に関するパラメータを得るための浸潤実験を行う.実験の結果を蒸発実験と同様に,一次元土中水分溶質移動モデルHydrus1D及びHP1で再現し,反応速度定数や窒素の吸着特性に関するパラメータを検討する.現場観測も引き続き継続して行う.これまでに得られた観測データの解析,実験で得られた知見を用いた計算結果と観測結果との比較から,現場での水移動が窒素動態に与える影響について検討する.
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