研究課題
わが国では農業農村整備事業において,農業用排水路の魚類を保全する試みがなされつつある.対象魚にとって好ましい生育・生息場を保全するには,水域のネットワークの維持,適切な水管理が必要とされる.局地的には,魚巣,魚溜などの環境配慮工が導入されている.しかし,環境配慮工の周辺は流れが緩やかになる傾向があるために堆砂が生じ,その有効性が阻害されるケースが報告されている.本研究の目的は,農業用排水路のような小規模水域の魚類生息場保全の観点から,流れ・流砂・路床変動の数値計算によって,より有効な魚巣や魚溜を設計するために必要な手法を開発することである.環境配慮施設の生息場としての価値を評価するとともに,長期的に堆砂が生じにくく,それらが管理しやすいものとなるよう,生態水理学,土砂水理学の観点から調査,分析する.当該年度では,前年度に引き続き,対象としている排水路の魚巣・魚溜設置区間において,水理観測,路床標高の空間分布調査を,灌漑期・非灌漑期に実施した.また,対象区間上流部において,水位,水温,濁度を10分間隔で自動観測する遠隔通報システムの運用を継続した.2016年から2019年の路床標高データをまとめ,半年ごとの堆砂変化量を整理した.その結果,対象地の魚巣では1年周期で夏季に堆砂,冬季に洗掘傾向があり,経年的な堆砂の蓄積はほとんどないことが分かった.さらに,魚巣の規模を変化させて流れ・路床変動の数値シミュレーションを行い,規模の違いによりシールズ数や堆砂・洗掘状況が時間的にどう変化するか推定した.
すべて 2019
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Journal of Rainwater Catchment Systems
巻: 25(1) ページ: 7-14