2019年度は、2018年度に引き続き、大規模稲作が進展した水田地域における「土地改良投資が少なく、労力も要さない」低コストの用水管理方法として1)番水による渇水時対応、2)従量料金制による節水的灌漑、3)巨大区画水田整備による水利施設節減をあげ、日本国内の事例を調査・分析した。また、4)条件不利地域(中山間地域)の水田の用水管理の方策についても事例分析を行った。 1)番水: 宮川用水地区(三重県伊勢市)、明治用水地区(愛知県安城市)等で事例調査を行った。用水逼迫度の状況に応じ、ムラレベルの用水管理の方法が、個人間から組織的なものに変化する状況を明らかにした。この成果は2020年度農業農村工学会大会講演会要旨としてまとめた。また、ウガンダ国の大規模水田灌漑地区での番水に関するデータ・情報を研究室所属の留学生より入手して分析を行った。番水ブロック内では不平等な配水にとどまっていることが明らかになった。この成果は、Paddy and water environmentに発表した。 2)従量料金制: 水田1筆ごとに量水メーターをつけて水利費を賦課する寺迫土地改良区(熊本市)についての1筆ごとの取水量データを分析し、2019年度農業農村工学会関東支部で発表を行った。 3)巨大区画水田整備: 国内の大区画水田地域(福井県福井市等)の現地調査を行い、米国・豪州の大区画水田との間で末端水利施設の比較分析を行い、水田区画拡大による圃場施設削減効果を分析した。成果は農業農村工学会誌等で発表した。 4)中山間地域の水管理: 中山間地域での用水管理労力節減のためのゾーニングについて検討を行った。ゾーニングのための土地交換の困難性を明らかにした。成果は2020年度農業農村工学会大会講演会要旨としてまとめた。
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