研究課題/領域番号 |
16K07942
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
長野 宇規 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70462207)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 農用地分類 / SAR / 水土里ネット / 毎筆調査 |
研究実績の概要 |
日本全国の農用地について水稲,水稲に次ぐ主要作物,耕作放棄地を中山間地においても毎年正確に判別し,今後の農地動態を明らかにできる安価で頑強な衛星画像解析法を開発することが本研究の目的である.オープンアクセスの中解像度衛星画像(合成開口レーダ(SAR)・光学)と水土里ネットが配信する農用地耕区データの併用によりコストと空間解像度の問題に対応する. 平成28年度は兵庫県篠山市(以下篠山)と新潟県上越市吉川土地改良区(以下吉川)の耕区群でドローンを併用しながら目視で土地利用調査を行った. 衛星画像はCバンドSAR のSentinel-1と光学センサのSentinel-2,ASTERを使用した.3月から10月までの期間Sentinel-1は24日間隔でデータを取得した.また光学センサ画像は同期間中被雲のないもののみを収集した.衛星画像は前処理(幾何補正,スペックルノイズ除去)の後,各圃場の耕区ベクターファイルにオーバレイされ,各耕区特有のピクセルの値のみを平均して分類に用いた.逐次抽出法を用いた結果,篠山で総合精度91.3%,Kappa係数0.78を得た.同じ条件を吉川に適用すると総合精度94.8%,Kappa係数0.77を得た. 水稲は16.1a以上の耕区であれば抽出精度は98.0%であった.SARによる被雲の影響のない時系列観測が特徴抽出の安定性に寄与していた.大豆は26.3a以上で完全な一致を示したが,面積が小さくなるとともに抽出精度が低下した.耕作放棄地については面積に関係なく抽出精度が低い結果となった.大豆と耕作放棄地についてはSARのみでは特徴差が捕捉できず,観測機会が安定しない光学衛星画像に依拠することが低い判別結果の原因である.サンプル数を増やすとともに,後方散乱係数やNDVI以外で特徴を捕捉する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に対して,狭い領域ではあるが,当初計画した研究手法とデータで分析を順調に進め,比較的高い総合精度を得た.水稲についてはSentinel-1の利用により天候に影響を受けず16.1aと比較的狭小な区画でも安定した判別が可能となった.行政から土地利用の毎筆調査データが入手できれば,より狭小な区画での判別精度の検証が可能である.大豆は多くの地域で水稲に次ぐ主要作物であり,正確な判別の重要性が高い.現在のところ耕作放棄地との明確な判別法が見つかっていない.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策の課題は大きく分けると農用地の判別特徴の精緻化と解析の広域化である. 農用地の判別特徴の精緻化については,H30年度より空間解像度の高いJAXAのALOS2(LバンドSAR)を用いて解析を行うことで16.1a以下の農地にも対応できるようにする.判別性能に関してCバンドSARとLバンドSARの比較実験を行う.大豆と工作放棄地の判別は引き続き有力な特徴の特定に努める.判別についてH29年度は逐次抽出法を用いたが,H30年度は調査の広域化による栽培時期の多様化を考慮して機械学習法の利用を検討する. 広域化については,土地利用の教師データと検証データの入手が鍵を握る.そこで兵庫県内を中心に農用地の転作調査で毎筆調査を行っている自治体との連携を進める.同様の取り組みは新潟県でも順次進める.ベータ版の土地利用判別データの提供を行いながら行政との協力関係を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初当予算で購入予定であった計算機器の購入を延期した.また謝金雇用が実施できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度分の研究費は適宜計算機資源の補強のために用いる.H29年度予算は当初の支出予定の通り支出する予定である.
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