鶏糞灰酸溶解液の堆肥化排気への脱臭液としての適性を評価するため,薬液洗浄型の脱臭装置を製作し,既設の有効容積4 Lの反応槽を備える堆肥化装置に連結させて実験を行った。作成した脱臭装置は3つの槽からなる。反応槽からのアンモニアを含む排気とその凝縮液が直接流入する脱臭槽1は,MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)などの窒素を含むリン酸塩の沈殿生成を優先させるために,槽内の脱臭液のpHを酸溶解液の注入によって8.2に調整した。脱臭槽2では脱臭槽1で回収できなかったNH3の完全な除去を行うために,脱臭液のpHを6.5に同様に調整した。脱臭槽2に続く分離槽では,脱臭槽2から送られた排気中の脱臭液とそのミストを分離した。堆肥材料としては鶏糞(敷料混合のブロイラー糞)を用い,1週間の堆肥化を行った。 堆肥材料からのアンモニア揮散は材料の質量と窒素含量の変化から3.30 gNと計算された。また,脱臭槽(1および2)に供給された酸溶解液の総量は224 gであり,その酸溶解液に溶解していたリンは3.26 gPと計算された。脱臭槽1において沈殿として得られたリン酸塩には,揮散アンモニアの13 %と,酸溶解液中のリンの68 %とが回収されていた。アンモニアの回収率が低かった原因としては,沈殿に含まれていたリンとカルシウムがほぼ等モルであったことから,沈殿の主成分がカルシウムとリン酸とが結合したリン酸水素カルシムであったことによると考えられる。アンモニアの回収率を向上させるには,MAP生成促進を目的として,酸溶解液へのMg添加や槽1の脱臭液pHの見直しなどが必要なものと考えられる。
|