研究実績の概要 |
農地や森林等の植生地における日最低気温は,植物の生長を規定する重要な環境因子である.地球温暖化の顕在化しつつある現在,多年生植物が秋季の低温不足に起因して翌春の開花に支障をきたす一方で,気温上昇に伴う植物の耐凍性の喪失により,遅霜害や凍害は逆に増える傾向にある.西日本(2010 年3,4 月)・南米チリ(2013年10月)の広域甚大霜害は記憶に新しい.したがって,植生地では日最低気温の問題は温暖化により掻き消される過去の問題では決してなく,その科学的な理解と予測が要求される「これからの問題」でもある.植生地での低温はどのように生じ,如何にして日々の最低気温が決まり,それが空間的にどう分布するのか?温暖化に伴い都市の日最高気温が注目を集める中,植生地を対象とした広域的な日最低気温予測システムの構築は,将来に向けて持続的な植物生産を維持する上でも喫緊の課題と言ってよい. 平成30年度は、前2ヶ年度中に得られた結果に基づき,開発を行ってきた広域日最低気温予測システムを完成させた.最終的には,四国全域を対象に、ア既設のアメダス気象観測点よりも配置密度の高い、GPS電子基準点毎に日最低気温を予測し、その分布図として具体化・作成した.この手法をもとに,低温被害危険指数を対象点ごとに計算することのより、危険度評価付日最低気温の広域予測を併せて実施した.同指数の成果を基に,対象域内での低温の常襲地帯などを定量的に抽出することにより,それに起因した気象災害(霜害・凍害)の局地性についても明らかにした。
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